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「エディット・ピアフ 愛の讃歌」をAQUOS「LC-46RX5」のハイコントラスト映像で楽しむ山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.19(3/3 ページ)

» 2008年07月23日 11時58分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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photo 「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(写真は国内版DVD)。(C)2007 LEGENDE-TF1 INTERNATIONAL-TF1 FILMS PRODUCTION/OKKO PRODUCTION s.r.o.- SONGBIRD PICTURES LIMITED

 「エディット・ピアフ 愛の讃歌」は、題名通り1940〜1950年代に活躍したフランスのシャンソン歌手、エディット・ピアフの激烈な生涯を描いた作品。ピアフの幼女時代からその死までを描いているが、ストリートシンガーとして街角で歌い始める20歳から薬物・アルコール中毒でボロボロになる晩年(といっても、彼女は47歳で亡くなるので40代半ばだが)までを演じた新進女優マリオン・コティヤールの壮絶な芝居に誰もが息を飲むに違いない。

 マリオンは1975年生まれということだから、撮影当時31歳。極度の緊張でステージに出られないデビュー時の初々しさを童女のような表情で演じたかと思うと、もうまともに歩けなくなった療養所での日々を老婆のような表情で演じきる。彼女は、この2月のアカデミー賞で主演女優賞をかっさらったが、なるほどこの演技を見せられては、さしものアカデミー会員も称賛の声を惜しむわけにはいかなかったのだろう。

 撮影監督は、フランスをベースに世界で活躍する日本人、テツオ・ナガタ。ぼくは日本盤DVDと友人から借りたフランス盤BD-ROMで本作を楽しんだが、ナガタが手がけた映像がとびきり素晴らしいと思った。とくに印象的だったのが、エンディング。死の床にあるピアフが自分の生涯を振り返るシーンの明暗のダイナミクスと表情の豊かさに深い感銘を受けた。時系列を解体し、映像とピアフの声の力で、彼女の一生を構成するオリヴィエ・ダアン監督の力業もさすがだが、濃厚な色合いで描かれた1940〜1950年代のパリをバックに、苛烈な人生を歩んだピアフの表情を深い光と影を操って浮かび上がらせたナガタの手腕をたたえたいと思う。

 本機LC-46RX5の「映画」モードで見る本作は、そんなナガタの映像の核心を見事にとらえ、さまざまな出来事に翻弄(ほんろう)されながらも、前を向いて力強い声で人生の喜びと真実を歌い続けるピアフの表情を見事に浮き彫りにした。

 このよくできた「映画」モードで、とくに不満なくこの作品を楽しむことができたが、先述した本機の“肌色調整”の各項目をいじっていくと、マリオン演じるピアフのイメージをさまざまに変えられることが分かり、とても興味深かった。例えば「明度」を上げ、「色相」をマゼンタ(赤紫)方向に寄せると、ストリートシンガー時代のピアフの若さが強調できるというふうに。

 今や国民的テレビの代名詞となった感のあるAQUOSだが、この新Rシリーズは、その懐の深い映像表現力で、映画と対峙(たいじ)しようという真摯(しんし)な映像ファンの思いに見事に応えてくれるディスプレイだということが分かった。

 それから、このテレビのベゼルは黒のほかに茶の仕上げがあるが、この色がすごく良い。とてもシックな色で、木目を生かしたアジアン・コロニアルふうのモダンなインテリアにも似合うはず。デザインもXシリーズなどと異なり、すっきりとしたフォルムで悪くない。これで、素材の本物感が加われば文句なしなのだが……。

執筆者プロフィール:山本浩司(やまもと こうじ)

1958年生まれ。AV専門誌「HiVi」「ホームシアター」(ともにステレオサウンド刊)の編集長を務め、昨年秋フリーとして独立。マンションの一室をリフォームしたシアタールームで映画を観たり音楽を聴いたりの毎日。つい最近20数年ぶりにレコードプレーヤーを新調、LPとBD ROM、HD DVDばかり買ってるそうだ。


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