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第2回:小粒なのにピリリ、“ゴルフボール大スピーカー”のソニー「HT-IS100」サラウンドで北京五輪を堪能する(2/2 ページ)

» 2008年08月04日 12時23分 公開
[野村ケンジ,ITmedia]
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設置性

photo メインスピーカーの小ささは、このシステム最大のアピールポイント。実際の設置性の高さに加え、外観もすっきりしていて好印象。センタースピーカーにはリモコンの受光部も備わる

 50ミリ四方に満たないフロントスピーカーの設置性は、いうまでもなく、とても良好。ラックの上に置いても邪魔にならないし、壁に取り付けることも可能だ。これだけ小さいサイズであれば、環境的に不利な部屋であっても、それなりに理想的なポジションへスピーカーを配置できる。しかも自動音場調整機能付きだから、さまざまな環境でクオリティーの高いサラウンド空間を簡単に作り上げることが可能。この手軽さは大きな魅力だ。

 サブウーファーユニットは、アンプやディスプレイが一体となっているにも関わらずそこそこ小型。幅が238ミリ、高さと奥行きが約440ミリなので多少の存在感はあるが、光沢とマットブラックをセンス良くレイアウトしたボディーは無駄な主張がないうえに見栄えも上々。デザインマンションのような洒落た部屋から純和室まで、いかなるシチュエーションにもマッチしそうだ。

 スピーカーユニットは小さいが、それでもオーソドックスな5.1チャンネルサラウンドであるため、配線に関しては多少の煩雑さがある。中でもリアスピーカーの配線は、リビングなどでは(とくに奥様に)嫌われるかもしれない。けれどもスピーカーじか付けのケーブルは結構細いうえに、長さの余裕も確保されているので、ドアなどがない壁側やカーペット下、天井の隅などを利用して上手に配線すれば、それほど邪魔に感じることはないはず。スピーカー本体からのじかだしケーブルは専用コネクタであるうえに色分けされており、接続は短時間で済んだ。フロント一体型に比べるとそれなりに手間はかかるが、それでも5.1chサラウンドとしては手軽な方だと断言できる。

ユーザビリティーチェック

 パパッと配線して、このあたりかな〜と気軽にスピーカーを設置、そのまま30秒ほど待つだけで上質なサラウンドフィールドが出現する楽チンさは、何物にも代え難い魅力だ。また極小のスピーカーユニットは変に存在感を主張することなく、見栄えも良好。コンセプトに関しては、大成功といえる製品だ。

 システム設定などの操作性も悪くない。自動音場調整機能で設定された内容は、距離やボリュームなどの微調整が可能となっているが、メニュー構成が分かりやすく整理されているので説明書に1回目を通すだけでほぼ使いこなせる。リモコンは接続した各機器も簡易コントロールできる万能タイプだが、こちらもボタン配列が分かりやすく、使い勝手の良さを阻むことは一切なかった。

photophoto 自動音場調整機能で設定した項目は、メニューから微調整が行える。こういった難しい機能ゆえに操作性が悪くなるケースが多いが、HT-IS100の場合はメニュー体型が分かりやすいため戸惑うことはなかった

 今回のテストではテレビにパナソニック液晶テレビを利用したが、別メーカー同士でどこまでHDMIリンクが活用できるかも試してみた。TV側のリモコンでいくつかの操作をしたところ、オートジャンルセレクター(番組に合わせてサウンドモードを自動切替を行う機能)以外はおおむね対応していた。僕の場合、番組によってサウンドフィールドを変更することはないの全く問題はないが、ユーザーのためにもメーカー違いの垣根を越えた懐の深さ、さらに一歩踏み込んだ対応力を見せてほしいところだ。

サウンドチェック

 この小さいスピーカーユニットからは想像できないくらい、雄大で“包まれ感”の高いサウンド。もちろん小口径ユニットの限界は存在していて、中域の下側に若干音の薄さと輪郭の弱さを感じるが、そのかわり中域から上、人の声や楽器などが集中する帯域は明瞭(めいりょう)だ。何を言っているのか、はもちろん、そこにどんな感情が込められているのかが手に取るように分かる。映画鑑賞にもスポーツ観戦にも、ぴったり当てはまる1台だ。

photo サブウーファーユニット上面、ディスプレイの奥には12センチサイズのスピーカーユニットが密閉式で取り付けられている。裏側のバスレフ式16センチユニットとともに強力な低音を実現

 自動音場調整機能の恩恵もあって、サラウンド感も素晴らしい。部屋の360度すべてに音のカーテンが切れ目なくあらわれ、リスナーを別世界へと誘ってくれる。先のHT-CT100試聴で「サラウンド感に関しては文句のつけようがないほどのすばらしさ」と評したが、前言撤回。こちらはその数段上をいく。やはり、リアスピーカーの存在は大きい。「リアル」サラウンドの優位性を充分感じられる製品だった。

 サラウンドフィールドに関しては、スタンダードやマルチ、ムービー、ミュージック、スポーツ、ニュースなどが用意されているが、個人的にはスタンダードで充分だと思う。これだけ良好なリアルサラウンドを体感させてくれるのだから、余計なエフェクトは必要ない。好みによって使い分ける程度が得策だろう。そのほか圧縮音楽を補完する「ポータブルオーディオエンハンサー」や、どちらを向いてもステレオサウンドを体感できる「オムニディレクショナルサウンド」も用意されているが、こちらも好みによって取捨選択する範囲にとどまる内容だった。

お勧めしたいユーザー

 本格的なサラウンドを導入したいけれども、大きなスピーカーはイヤ。音質はもちろん大事だけれども、視覚的にもスマートに決めたい。そういう趣向の人にはぴったりの製品だ。

 ジャンル的には、スポーツ観戦や映画など、5.1チャンネルをフルに使った番組に相性が良かった。またA/V SYNCという、リップシンク機能も(こういった製品にしては珍しく)搭載されているので、映像と音声のずれが気になる人も重宝するだろう。

 最後に付け加えるとすれば、セッティングが5.1チャンネルサラウンドの割に簡単なので、僕のような面倒くさがり(笑)にも悪くない選択肢になるはず。このように、さまざまな面でメリットのある、「小粒だけどピリリと辛い」秀作だと断言しよう。

試聴に使用した環境

photo パナソニック「TH-37LZ85」。パナソニックの液晶テレビシリーズの上位モデル。フルHDパネルに加えて、倍速表示を採用。x.v.Colorにも対応する

 今回のテストには、わが家の自称「極小シアタールーム」を使用。広さは6畳程度であるものの、スピーカー下の床を抜いて地面から直接重量ブロックを積み上げたり、両サイドの壁面に反響板を設置して音響特性をそろえるなど、ホームシアター系のテストにはおおよそ適した環境となっている。

 この部屋のスクリーン面にパナソニック製の37型フルハイビジョン液晶テレビ(TH-37LZ85 オープン価格)とラックを設置。基本的にスピーカーはラック上に配置しているが、ラックからの音質的な影響を最小限にとどめるよう、インシュレーターなどを適宜利用して公正な判断をもくろんだ。

 また電源タップ(AT-PT707 オープン価格)やHDMIケーブル(AT-EDH1000/1.3 2万3625円)、光デジタルケーブル(AT-SDP2000/1.3 1万8900円)にはオーディオテクニカ製の高級モデルを使用。配線や電源による音質の劣化も最小限に抑えた。


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