麻倉怜士のデジタル閻魔帳
CEATECで発見した「近未来のテレビ像」(1/3 ページ)
今年も盛況のうちに閉幕したアジア最大級の展示会「CEATEC JAPAN」。初日に発表された「AQUOS X」などを除けば、展示会での初お披露目製品は少なく、“新製品ラッシュの展示会”という雰囲気はあまりなかったようにも思えるが、各ブースを詳しく見てみると、近未来のテレビを指し示す指標は随所に発見できた。
デジタルメディア評論家の麻倉怜士氏による月イチ連載『麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」』。会期中も各種講演やトークセッションを精力的にこなした麻倉氏に、会場で麻倉氏が見つけた「近未来のテレビ像」について語ってもらった。
――今回は会場で新発表された製品が少なく、各社ブースには発表済みの製品が多く展示されていました。ですが、液晶テレビではソニー「KDL-XR1」とシャープ「AQUOS X」といった、LEDバックライトの搭載が目を引きましたね。
麻倉氏: 確かに今回のCEATECでは、製品レベルでの目新しい展示は少なかったのですが、「これからのテレビがどうなるか」という技術面からの提案が多かったのが特徴といえるでしょう。
これまでもCEATECは「液晶テレビの画質改善ショー」ともいえる側面を持っており、IPS液晶や倍速駆動などもこの展示会でお披露目されてきました。今回はLEDバックライトを搭載した液晶テレビが本格的に登場し、“液晶3悪”のひとつである、暗所コントラストの改善を提示してきました。
LEDバックライト搭載製品を展示するソニーとシャープはいずれも「コントラスト比100万:1」をアピールしていましたが、そうした、いわゆる「メガコントラスト」はシャープが2005年に技術展示を行っています。当時のメガコントラスト液晶には部分発光制御は導入されておらず、全面制御の2枚変調方式ではないかといわれていましたが、今回はLEDバックライトの導入で部分制御を行いながらも、100万:1という高いコントラス比をアピールするに至っています。
もっとも、この100万:1は全黒/全白での数値であり、パネルコントラストは3000:1程度ですが、実際に目で見るとそのコントラスト比は10万:1程度と言われています。部分制御については、2007年1月のInternational CESでSamsung Electronicsが「Local Dimming」という言葉で発表を行っていましたし、同年のCEATECでは、ドルビーや日本ビクターも同様に発表を行っています。昨年は技術発表レベルであったものが、今年になって製品実装されたという流れですね。
いち早く実用化したソニーですが、話を聞くと4年ほど前から部分制御について研究を行っていたそうですが、かなりの苦労があったようです。液晶テレビの画質改善を進めるためにはコントラスト比の改善が欠かせないという考えから、LEDバックライトの導入を研究し、実用化したとのことですが、実は新製品でもやりきれていない部分があるそうです。
LEDバックライトを搭載した「KDL-XR1」では、深夜の月が輝くようなシーンでモアレが出る、明暗差で段差が出るといったLEDバックライトに起因する弱点はあまり感じられない程度に抑制されていますが、黒側のダイナミックレンジを広げることはできましたが、白側のダイナミックレンジ――明るい部屋でのきらめき感など――を広げることは断念したそうです。次モデルでは、その部分に改良を加えてくるでしょう。
新技術を投入した初期のモデルはどうしても、「黒が沈みました、白もハッキリしました」という技術志向なアピールになりがちです。人為的、人工的な感じが前面に出るプレゼンテーションから一歩引いて、感情的な、あるいは情緒的なニュアンスを組み込んでいくことが今後は求められるでしょう。
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