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「ちょっと大きく」という新ジャンル、超小型プロジェクター「MPro110」レビュー(2/2 ページ)

» 2008年12月15日 17時31分 公開
[ITmedia]
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 電源を入れると、青地に赤で「3M」と書かれたロゴが浮かび上がる。立ち上がるまでの時間は3〜4秒といったところで、待たされる感じはほとんどない。

 灯りを落とした室内で最大投影距離である1.8メートルにセット、ノートPCからXGAの信号を入力したところ、正直に言って投影面はかなり暗い。何が写っているかは判別できるが、全体的に投影画面が暗く、パネル解像度はVGAなので、このサイズに投影してしまうと、Webブラウザを立ち上げても文字はかなり目を凝らさないと読めない。

 輝度が高くないために色はあせて見えるが、色彩は識別できる。ただ、やはり絶対的に明るさと色彩が不足しているため、動画などをこの距離で投影しても、「映像を楽しむ」といったところにまでは達していない。情報伝達の手段としてどうにかというレベルだ。

photophotophoto 暗い室内で1.8メートル先の白壁に投影。スライド鑑賞ならばOKという感じ。映像も何が映っているかは分かるが、鮮やかさはほとんど感じられない

 説明書には、6通りの投影距離と投影サイズが例示されている(下表参照)。そこで、その6パターンを試してみた。データプロジェクター的に使える(Webブラウザの文字サイズ「中」が明確に判別できる)レベルといえば、最短の0.305メートル(305ミリ)のみだったが、0.61メートル(61センチ)の距離ならば、かなり鮮明な映像を楽しむことができた。

投影距離(メートル) 投影サイズ(横幅:ミリ)
0.305 163
0.610 235
0.914 355
1.219 523
1.524 739
1.8 975

 その0.61メートル時の投影サイズは横幅235ミリ。コピー用紙などに多く使われるA4サイズが297×210ミリなので、A4サイズの白い紙をスクリーンがわりにするとちょうど収まることになる。必要な奥行きも約60センチなので、デスクの奥行きでなんとかまかなえる。もっとも、市販の一般的なライティングデスクでは60センチの距離をとるとギリギリになることが多いだろうと想定して、距離を40センチとしてみると、投影された画面サイズは約10型(約205×154ミリ)となった。

 約10型というサイズでは、プロジェクターという言葉から想像される“大画面感”から離れてしまう。しかし、卓上でiPodを接続して購入したミュージックビデオやYouTubeの画面を“ちょっと大きく”して、デスクトップシアターとして映し出すのはなかなかに楽しい。

photophoto A4のコピー用紙をスクリーンがわりに、60センチの距離で投影(写真=左)、投影距離を40センチにして壁に直接投影した「デスクトップシアター」(写真=右)

 今回はPCとiPod touchに接続してみたが、iPod touch接続時には「内蔵スピーカーがほしい」と強く感じた。PC接続時にはPCのスピーカーを鳴らせばよいが、iPod touchの場合は(スピーカー内蔵の第2世代でも)、映像出力ケーブルを接続してしまうと内蔵スピーカーはオフになってしまう。本製品自体はほとんど無音なので、音が鳴らないとちょっとさみしい。同時期に販売開始された「pocket projector PK101」(オーエス)はスピーカーを内蔵しているだけに、この点については後継製品の課題となるだろう。

 同価格帯の「PK101」との比較でいえば、投影方式の違い(本製品はLCOS、PK101はPico DLP)や投影距離などにも違いもあるが、最大の違いは入力インタフェースとスピーカーだ。本製品は2系統の入力を持ちPCとの親和性も高いが、スピーカーを搭載しない。PK101はその逆で、PC入力には標準対応しないがスピーカーを搭載する。入力インタフェースとスピーカー、どちらを重視するかは、人によって判断が分かれるはずだ。

 ここで考えておきたいのが、本製品を評価すべき際に必要な切り口だ。プロジェクターという言葉が、イコールでホームシアター的な「大画面」というイメージを持つようになって久しいが、本来は「投影機」を意味する製品であり、投影サイズだけを問うことは、プロジェクターという製品の本質から外れているともいえる。

 最大でも32型までの拡大となる本製品については、iPodやスマートフォン、デジカメなどの小さな画面を、どこでもちょっとだけ大きくできる「モバイル&ポータブルディスプレイ」として評価するべきだろう。その観点からしても約1時間というバッテリー寿命や画面の明るさ、鮮やかさ、スピーカーの非搭載など改良されるべき点は多い。しかし、これまでになかった新ジャンルを創造する製品であることも確かだ。

 今回、一例として紹介したデスクトップシアターのほかにも、iPodのムービーをみんなで楽しむ、旅先で撮影したデジカメやビデオの画像を投宿した宿で楽しむなど、ちょっと考えただけでも、新ジャンルの製品として、コレまでのプロジェクターではできなかった使い道はかなりありそうだ。後継製品はもちろん、スピーカーやUSB、カードスロットなどを備えたバリエーションモデルの登場も期待したい。

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