ITmedia NEWS >

デジタル分野総ナメ――「2008年デジタルトップ10」麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/4 ページ)

» 2008年12月17日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――5位にはデジタルカメラ「PowerShot G10」をチョイスされました。実は、2008年のInternational CESの会場でPowerShot G9を手にされているのを拝見したことがあります。

麻倉氏: 実はPowerShot G2(2002年発売)からのPowerShot Gシリーズユーザーです。PowerShot Gシリーズは一貫して、デジタル一眼レフとコンパクトデジタルカメラの中間的なポジションを保持し続けており、品位の高い写真を撮れますし、非常に使い勝手に優れているのです。

 G9からG10と進化した際に最も評価したいのは、レンズの広角化です。PowerShot G10は35ミリ換算28ミリからのレンズを搭載しており、G9(35ミリ換算35ミリ)に比べて、撮影できる局面がグっと広がりました。コンパクトな常用カメラとして活躍してくれています。

photo

 シリーズとしてコンセプトのブレがない点も評価したいですね。バリアングル液晶を廃したG7以降はスタイルもほとんど変わっていませんし、モデルチェンジしても全体のスタイルを変えず、細部をブラッシュアップし続けています。デジタルという最先端の機能性も取り込みながらアナログ的なコダワリも保持し、ひとつの世界を堅持しています。普及価格帯の製品は画一化しがちですが、熟成型と呼ぶべき物づくりの世界をかいま見せてくれる製品です。

 キヤノンの物づくりという観点からでは、フルHDビデオカメラ「iVIS HF11」も素晴らしい製品です。AVCHDという規格の上限に挑みながら、シャッキリ・クッキリした映像により磨きをかけています。熟成の物づくりという点では、同社はよい波に乗っているといえるでしょう。

――4位はパイオニアのプラズマテレビ「KURO」シリーズです。パイオニアが年末モデルを最後に、プラズマパネルの自社生産から撤退することを残念に感じるファンも多いと思います。

麻倉氏: フラットパネルテレビ市場では液晶が多くを占めますが、プラズマはプラズマならではという画質の高さを生かした「プレミアムディスプレイ」としての存在感を保つべきであり、そのなかでもKUROシリーズを抜きにして話を進める訳にはいきません。

photo チューナー付きモデル“KUROテレビ”「KRP-600A」「KRP-500A」

 最近では液晶サイドからも画質追求が激しく行われていますが、液晶とプラズマを並べてみると黒の再現性を始め総合的な画質については厳然たる違いがあります。液晶が部分制御をしてもバックライト発光と自発光という基本的な構造は変わらない訳で、自発光であるプラズマの総合画質としてのクオリティもまた変わりません。

 現行のKUROシリーズは黒がより締まり、力感が増しただけではなく、暗部階調の出方もスムーズです。中間色や中間階調も安定しており、眼にやさしいテクスチャを実現しています。大画面になればなるほど映像や信号の安定感は大切になりますが、その観点からも優れており、かつ表現力も高いのです。パイオニアがここまで培ってきた技術が結実した製品といえるでしょう。芸術的とでもいえるような品位の高い映像です。

 今後はパナソニックからパネルの供給を受けることが既に発表されていますが、パナソニックのプラズマも優れています。黒の出方がとても素直で、ここだけを着目すればKUROシリーズより良いかもしれません。パイオニアの技術がパナソニックへ導入されることで、よりプラズマ陣営の力、訴求力が高くなると思います。

――3位はマイクロフォーサーズ規格の採用第1号機となる、デジタル一眼「DMC-G1」です。

麻倉氏: DMC-G1は新しい時代のデジタル一眼のカタチを示し、非常に感動させてくれた製品です。デジタルカメラの登場から久しいですが、デジタル一眼についてはフィルムが撮像素子に変わっただけという状態が長く続いていました。カメラメーカーという看板を持った企業がうまく移行したといえますが、デジタルらしさという新鮮味には欠けていました。

photo DMC-G1

 DMC-G1の素晴らしい点は、小さく軽く、ライブビューも非常に見やすいなど、デジタルならではの利便性を最大限に生かしていることです。それに、操作系も練り込まれていますね。

 解像感や先鋭感、質感といった部分はさすが一眼と感じさせる風格をもっており、ハンドリングも良好です。国内での展示会や取材で、わたしの標準カメラとなっています。ですが、絵については、テレビの店頭デモモード的な、超ダイナミックなインプレッション重視の絵づくりになっています。ちょっと昔のナショナル的な感じがしますね。

 「デジタルならでは」という観点からすれば、形状がややクラシカルですが、ミラーレス構造を可能にするマイクロフォーサーズ規格を採用するならば、以降の製品ではその制約も緩和できるでしょう。新規格の第1号機であることもクラシカルなフォルムが採用された理由のひとつですが、デジタルならでは機能や利便性を優先させた形状にもできるはずです。

 左手でレンズ、右手でボディという両手を使う操作インタフェースはいわゆる一眼レフの流れをそのまま踏襲していますが、片手ですべて完結する操作系もフルデジタル化すれば可能です。同社はアナログカメラの資産を持たないが故に、思い切ったことができるはずで、そこに期待したいですね。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.