気が付くと既に12月も半ばとなり、今年も残りわずか。今年最後の「デジタル閻魔帳」は、昨年と同じく麻倉怜士氏が2008年を振り返って特に印象に残ったモノを、ハード・ソフト問わずにランキング形式で紹介してもらう「麻倉怜士のデジタルトップ10」。麻倉氏の挙げる、今年最も印象に残ったデジタルトピックスは以下の通りだ。
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――ではさっそく始めましょう。10位はアレグロ(Allegro)の電源ケーブルです。この「デジタルトップ10」も2005年、2006年、2007年と続き、今回で4回目ですが、過去にこうしたケーブル類がトップ10入りしたことはありませんでしたね。
麻倉氏: 元来、ケーブルはあまり凝らない方なのですが、これほど画質・音質を向上させるケーブルは初めてです。電源周りに手を入れれば、画質音質に変化が出ることは分かっていますし、自室には電源レギュレーターを3基導入しているほどです。このあたりの話は「オーディオの作法」(ソフトバンク新書)に詳しく書きましたが、ケーブルを交換するだけでここまでの効果が表れるとは非常に驚きでした。
それまでもかなり高級なケーブルを使っていましたが、音の鮮度がまったく違いました。堅いところがたちまちほぐれ、ベールが数枚はがれるような効果が得られます。わたしは最上位品を5本も購入してしまいました。その価格以上の音質が得られると判断したからです。自室のAVルームには多くのメーカーの方が試作機を持って訪れますが、このケーブルにつなぎ替えると、反応が面白いですね。みんな、あまりの違いにイスから転げ落ちるほどです。
このケーブルは米国で映画会社に勤務していたBrent Schoenfeld氏が趣味的に作り始めたものです。完全に手作業で作っていることもあるのでしょうが、注文して半年以上納入されないということもありました。とっても個人的な理由で、気分がのらずに作業が完全にストップしたのです。ですが、それだけの手間をかけて入手する価値はありました。
基本的にはプロフェッショナル向けの代理店でのみ販売されており、実際、エイベックスやEMIミュージックジャパンなどの録音スタジオにも多く導入されていますが、貸し出しすると、いやだ、返したくないとみんな買ってしまうそうです。すべての人を驚かせ、財布のひもをゆるませる驚異的なケーブルといえるでしょう。
――9位に選ばれたのは、ソニーのフルハイビジョンビデオカメラ「HDR-TG1」です。縦型のスリムなボディで、“世界最小・最軽量”を実現したことでも話題となりました。
麻倉氏: ビデオカメラは利用するメディアこそ変化していますが、その形状とイベントカメラという用途は変わっていません。だからこそ、年間130万台しか売れないという市場規模は変わっていないのです。ですが、YouTubeやニコニコ動画などを見れば分かるように、「動画」へのモチベーションを持つ人は多く存在しています。HDR-TG1は、イベントカメラという壁を打ち破る製品が存在しうることを証明してくれたといえるでしょう。
記録メディアにメモリを採用するならば、本体形状の自由度は高くなりますし、小型化も容易なはずです。将来的にはカセットテープサイズまでの小型化が進むでしょう。いつでも携帯でき、しかもハイビジョン撮影という製品が登場すれば、爆発的なヒットとなるでことでしょう。
また、ニコン「D90」やキヤノン「EOS 5D MarkII」などデジタル一眼レフがハイビジョン動画撮影に対応しつつあるのですから、逆にビデオカメラ側から静止画へのアプローチがあっても良いはずです。
HDR-TG1に話を戻せば、世界最小を実現したとはいえ、胸ポケットに気軽に入れられるほど小さい訳でもなく、決して100%満足できる製品とはいえません。ですが、いつでもどこでもハイビジョン撮影――「5WH1ハイビジョンビデオ」が登場するための土壌を築く可能性を秘めた製品であることから、期待を込めての選出としました。
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