ITmedia NEWS >

デルの超小型モバイルプリンタ「Wasabi」はどんな味!?ポケットに入る印刷機(2/2 ページ)

» 2009年02月25日 18時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]
前のページへ 1|2       

PCからはBluetooth接続でプリント可能

 さて、今回はPC USERでのレビューということで、低価格ミニノートPCに保存されたデジカメのJPEG画像をBluetooth接続でWasabi PZ310に転送し、プリントしてみた。使用した低価格ミニノートPCはデルのNetbook「Inspiron Mini 9」だ。Wasabi PZ310はUSBでのPC接続をサポートしていないため、利用するにはPC側にBluetoothの装備が必須となる。Inspiron Mini 9はBTOでBluetoothモジュールを選択できる。

PCのBluetoothユーティリティでWasabi PZ310を登録しておけば、Windowsのエクスプローラで画像を選択し、右クリックメニューから「送る」→「DELL PZ310」を指定することで、画像の転送から印刷までが行える

 印刷の手順は実に簡単だ。PCのBluetoothユーティリティでWasabi PZ310を登録後、エクスプローラの「送る」メニューやBluetoothのファイル転送ツールを利用し、Wasabi PZ310に任意の画像データを転送するだけで一気に印刷までが行える。対応用紙がZINKペーパーしかないため、用紙種別の設定は不要で、印刷品質の調整などもできない。印刷枚数の指定もできないのはもどかしいが、本体の再印刷ボタンを押せば、手軽に複数枚の印刷が可能だ。

 試しに、1000万画素クラスのデジカメで撮影したJPEG画像(4.5Mバイト)を出力してみたところ、画像データをBluetoothで転送してプリンタの動作が開始するまでに50秒程度、そこから印刷が完了するまでに50秒程度かかった。再印刷であれば、再印刷ボタンにより画像データの転送時間は省けることになる。印刷音は非常に静かなので、静粛な場所での利用も問題ないだろう。

 印刷時に1つ注意したいのは画像データの向きだ。Wasabi PZ310は画像の縦位置/横位置を自動認識できないようで、PCから横位置で撮影した写真をそのまま印刷すると、画像の左右がカットされ、上下に余白ができた状態で出力されてしまう。通常は縦位置で写真を撮影するケータイ向けのセッティングなのだろう。つまり、横位置の写真は印刷前に画像を90度回転させておく必要があるのだが、回転による元画像データの劣化が気になる場合は、印刷用に画像をコピーしたり、可逆圧縮で画像を回転できるソフトなどを使うといいだろう。

どこかノスタルジーを感じさせる印刷品質?

 さて、実際に印刷した写真の品質だが、お世辞にも高画質とはいえないものがある。どこか退色したような仕上がりは、よくいえば「昔のアルバムから出してきたような雰囲気のある」、悪くいえば「発色や階調性に欠ける」といった印象だ。写真を高画質に印刷することより、どこでも手軽に写真を印刷して楽しむことを優先した製品コンセプトであるのは重々承知だが、個人的にはそれでも画質にもう少し気を配ってほしかった。

 もっとも、これはWasabi PZ310固有の仕様ではなく、ZINK Zero Ink技術を採用したプリンタ全般に当てはまる傾向だ。今後、ZINK Zero Inkの規格がバージョンアップするのであれば、他方式のコンパクトフォトプリンタに見劣りしないような画質面での向上を望みたい。

Wasabi PZ310のプリントサンプル。もちろん写真の内容は十分判別できるが、空の薄いブルーなど明るい階調は飛び、逆に暗い階調はつぶれてしまった。右の写真はキャリブレーションしても下のほうにバンディングが出てしまっている。画像は300dpiでスキャンしたものを縮小して掲載している

プリントサンプルの元画像。こちらも画像を縮小して掲載している

モバイルプリントの楽しさが味わえるが、デルならではのもう一工夫も欲しい

Bluetooth搭載のPCであれば、組み合わせて利用できるが……

 Wasabi PZ310は、ケータイやデジカメで撮影した写真をどこでも手軽に印刷できるという特徴から、同窓会やパーティ、合コンなどで場を盛り上げてくれるツールとして活躍しそうだ。裏面がシールになっている点や、下手に画質が高すぎない(写真のアラが目立たない)点も、こうしたシーンではうまく作用してくれるだろう。

 また、BluetoothやPictBridgeの操作は必要になるものの、インクカートリッジや用紙種別の選択、プリンタの印刷設定など難しいことを考えずに使えるため、プリンタ初心者がハードルの高さを感じずに利用できるのもポイントだ。価格も抑えられているので、こうした製品のメリットにひかれるならば、検討してみる価値はある。

 ただし、世界屈指のPCメーカーであるデルがまったく新しい製品名をひっさげて投入したモバイルプリンタとして見ると、少々物足りない部分もある。印刷方式に依存する画質面はさておき、PCとUSB接続してプリントできないのは、モバイルノートPCやNetbookの周辺機器として考えると少々残念な仕様だ。今後はPCとUSBで接続したうえで、フレームなどを加工して印刷したり、USBバスパワーで駆動できる機能があれば、Wasabiの魅力はより高まるに違いない。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.