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Blu-ray Discの現在地、進歩するプレーヤー麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/4 ページ)

» 2009年07月03日 11時31分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

BDプレーヤーが普及する3つの理由

麻倉氏: 先ほど述べたよう、昨年から各社より高級プレーヤーが登場し、今夏にかけては低価格製品も充実してきました。絶対的な製品数でいえばまだレコーダーに及びませんが、「BDプレーヤー」というひとつのジャンルを形作るまでに至っています。その理由は3つあると考えられます。

 1つめはパッケージの数です。BDパッケージの数は現在2000本以上といわれていますし、レンタルも開始されています。ソフトの面からも1つのジャンルを成すまでに至っているのです。

 2つめはホームシアターシステムとしての重要性です。レコーダーは当然ながらレコーディングの機能が優先されているため、セットした時間になると録画が開始されて再生が中断したり、多機能であるためにリモコンが複雑だったりします。再生を楽しむ機械として考えると、プレーヤーを別途設置したほうが便利ですからね。

 3つめは高級機に代表される、優れたプレーヤーの存在です。さまざまな工夫によって、あくまでも録画機であるレコーダーで見るより、美しい映像や音声を楽しめる製品が数多く登場しています。そろそろ、レコーダーとプレーヤーを分けて使う時期に来ているのではないでしょうか。

 DVDプレーヤーでは市販DVDビデオの再生が第一になっており、DVD-RAMが再生できないなど、エアチェックの再生機としては不十分という製品もありました。ですが、BDではプレーヤーでの記録ディスクの再生互換性は完璧です。それに、BDはエアチェックしたディスクも性能がよいので、プレーヤーについては、“どれだけ収録されたものを引き出せるか”に注目すべきです。

「HDMI 2系統」で実現する高画質・高音質

麻倉氏: そのBDプレーヤーですが、ハイエンド製品の画質・音質の良さは際だっています。なかでもユニークなのは、HDMIなどのインタフェースを工夫することで画質・音質を向上させようというパイオニア「BDP-LX91」やデノン「DVD-A1UD」における取り組みですね。

photophoto パイオニア「BDP-LX91」(写真=左)、デノン「DVD-A1UD」(写真=右)

 HDMIは映像と音声が入れ子構造になっており、どちらかだけという伝送はできない仕様です。広帯域の映像と音声を扱うBDの場合、1つの伝送路で映像と音声が帯域の奪い合いをしているのです。ソニー「BDP-S5000ES」などでは、SBM(Super Bit Mapping)を切ると、とたんに音質が向上します。「それならば、便宜上でも、分離した方がよい結果になるのでは?」という考えを具現化したのが、上記の2製品です。

 BDP-LX91とDVD-A1UDのいずれもHDMI出力を2系統用意し、1系統は「映像は黒のみの伝送/音声帯域を広く」、1系統は「音声帯域を絞り/映像帯域を広く」のような出力を行うことで、実質的な映像/音声の分離伝送を実現しています。

 これは非常に効果的なので、秋に登場するモデルではこうしたセパレート出力に対応する製品が増えるでしょう。ハイビジョン/HDオーディオ環境下においては、HDMI Licensing, LLCとしてもフォーマット策定に前向き取り組んで欲しいと思います。

 デノンのDVD-A1UDにはさらなる工夫が盛り込まれています。映像と音声を2系統のHDMIで伝送するという方法はパイオニアのBDP-LX91と同じですが、イーサネットケーブルを使った「DENON LINK 4th」によってプレーヤーとアンプのクロック周波数を同期させることによって、ジッタを大幅に低減し、音質を向上させることに成功しています。その効果は大きく、リンクさせていない時にはHDMI特有の堅く、ほぐれない感じがありますが、リンクさせると、まろやかでしっとりとした、HDMIで伝送しているとは思えない、自然さを感じ取ることができるようになります。

 イーサネットケーブルを利用したのはデノン独自の工夫ですが、HDMIの新バージョン「1.4」ではHDMIケーブルでデータ通信を可能にする「HEC」(HDMI Ethernet Channel)が実装されるため、同様のことがHDMI自体でも行えるようです。それならば、「クロック同期」をHDMIのアプリケーション仕様として用意した方がよいと思えます。

 HDMIを使った機器間制御(HDMI-CEC)は広く普及していますが、初期段階に規格としての厳密な仕様策定が行われなかったため、事実上、メーカーによる利用者囲い込みという側面が強くなっています。ですが、クロック同期については他社製品同士の組み合わせでも利用できるようになって欲しいですね。

 余談ですが、DENON LINK 4thを利用してクロック同期を行うと、理論上、映像には何ら影響しないの映像も良くなるのです。レンジが広くなり、解像感や鮮明感も増すのです。クロック周波数の同期化が映像にも好影響を与えていると想像はできますが、デノン側でもその詳細は解明できていないそうです。

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