液晶モニターのヒンジの根元部分に用意されたボタンでマニュアルモードに切り替えれば、レンズ鏡筒部分に用意された大型のリングでフォーカスやズームを調整できる仕組みも前モデルと変わらない。リングの粘りも絶妙で、このクラスでは同社製品でしか味わえない心地よさといえる。ただ、リングで操作できないマニュアル調整は、タッチパネルで操作する仕様上、設定用のボタンが画面を大きく占有してしまい、ボタンを押した感触も伝わりにくい。クイックな操作にあまり向いていないのが惜しい。
オートに切り替えた際の便利さも従来どおりだ。最大の特徴ともいうべき「おまかせiA」は、専用ボタン一発で自動的に切り替わり、かつシーンモードが5種類(動画撮影時)の中から自動で設定される。今回テストした範囲でも、人物撮影や風景、ローライト(暗い場面)といったシーンが的確に選択された。もちろん顔検出も有効だし、特定の人物や被写体にピントをあわせ続ける「追っかけフォーカス」も併用できる。
なお、おまかせiAがオフの時や、おまかせiAがローライトと判断しなかった場合は、増感を抑えてノイズの発生を半減させるようになった。これもライバルに対応した仕様変更だが、夜景などの撮影時におまかせiAのオン・オフによって画面の明るさが変わるようであれば、暗いほうがノイズの少ない映像になっているので、好みに応じて適宜オフにして撮るのもいいだろう。こうした場合、専用ボタンが押しやすい位置にあり、画面内でのオン・オフの表示も適切なのはありがたい。
屋外での液晶モニターの見やすさはライバルに一歩譲る。周囲の明るさに応じてパネルの輝度を変更する機能もついているのだが、それでも限界を感じた。ビューファインダーはこうした場面に対処できるため、便利な装備であることは間違いない。シャッター速度やホワイトバランスといったタッチパネルで設定する項目も、ビューファインダー使用時はマニュアルリングで操作可能になる。
また、液晶モニターの反対側には、こちらも最近めっきり少なくなった、電源スイッチを兼ねた大きなモードダイヤルがある。移動中など確実に電源をオフにしておきたい時は見た目でも確認できるのが好ましい。1つ1つの機能には改良の余地を残す部分があっても、別の選択肢を用意することで全体としての使い勝手に配慮するバランスのよさは、放送用機器を含めて長くビデオカメラを作ってきた同社らしい特徴といえる。
HDC-TM350は、登場時期が非常に早かっただけに、ライバルに追従したマイナーチェンジ版という印象が強く、画質面で他を圧倒する特徴も見出しにくいものの、前機種に比べて使いやすさが増していることも間違いない。カメラらしいデザインのボディで選ぶ向きもいるだろうし、一歩進んだフルオート機能に難しい設定を任せ、被写体と向き合っての撮影に集中するのにも適した製品だ。
作例は、静止画はアスペクト比3:2の約795万画素(3984×2656ピクセル)、動画については最高画質のHAモード(1920×1080ピクセル/約17Mbps)で撮影したものをEDIUS Pro 5で切り出している。撮影時の設定カスタマイズは行っておらず、フルオート撮影だ。
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