この秋登場した各社のフルHD対応デジタルビデオカメラから4製品をピックアップして詳しく見てきた。各社の上位モデルを集めたにもかかわらず、ターゲットとする層が完全には重ならないため、製品ごとに異なる性格を持っていることがおわかりいただけたと思う。ここではまとめとして、各製品のレビューでは言及できなかった点を補足しておきたい。
・極上性能をコンパクトに凝縮、ハンディカム 「HDR-CX520V/CX500V」
・精細描画とマニュアル操作に注目、Everio「GZ-HM400」
・ライバルを猛追する良バランス機、パナソニック「HDC-TM350」
今秋モデル全体の大きな特徴といえば、まずは「光学式手ブレ補正機構の進化」だろう。ソニーの春モデル「HDR-XR520V/500V」はライバルメーカーにとって衝撃だったらしく、キヤノン「iVIS HF S11」とパナソニック「HDC-TM350」が強力な補正モードを搭載してきた。本家ソニーの「HDR-CX500V」もさらなる改良が施され、これら3社の対応機種では、後ろ向きに歩いて被写体と会話しながら撮るというアクロバチックな方法でも安定した画を得られることが確認できた。
もうひとつ、HDR-XR520V/500Vの際立つ特徴であった「暗部のノイズ低減」については、技術的ブレイクスルーが必要で早期実現が困難なためか、キヤノンとパナソニックは撮影時のパラメーターを調整することでノイズを目立たなくするという対策を打った。急場しのぎの対策といえなくもないが、結果として「低照度の状況での撮影」に対するメーカーのとらえ方が変わったという点では重要。
「常に被写体をクッキリハッキリ見せる」というパラメーターがあれば十分、という考え方が改められて「暗い画」をあえて撮るという選択肢が増えたからだ。こうした機能面での強化や、日本ビクターの「GZ-HM400」で特に顕著に見られた基本的画質のさらなる向上により、ユーザーは「どのように撮れば被写体の魅力を引き出せるか」ということだけにより集中しやすくなったといえる。
この秋モデルでは、内蔵記録メディアがフラッシュメモリに一本化されつつあることもポイントだ。春モデルではキヤノン以外の3社が展開していたHDD搭載モデルも今後は数が減っていくだろう。というのも、消費電力や耐衝撃性、利用可能な場所など、HDDはフラッシュメモリに比べて制約が多く、容量あたりの価格が比較的安いこと以外に、ビデオカメラの記録メディアとして採用する理由を見つけにくいからだ。
将来の話はともかく、現行のHDD記録モデルは、大容量の保存メディアをカメラに内蔵できる、つまりビデオライブラリを携帯できることが最大のメリットといえる。こうしたニーズには、パナソニックの今秋モデルである「HDC-HS350」と、ソニーの春モデル「HDR-XR520V」があてはまる。どちらも240GバイトのHDDに最高画質で30時間前後も保存しておけるから、ライブラリをすべて持ち歩けるユーザーもいるだろう。ただし、バックアップとして外部メディアを活用すべきなのは言うまでもない。
一方のメモリ記録モデルは、温度や振動に強く、アクティブなシーンへ持ち出しやすいのが大きな魅力。64Gバイトモデルのキヤノン「iVIS HF S11」なら最高画質で6時間弱、32Gバイトの日本ビクター「GZ-HM400」でも3時間近く収録できるので、メモリモデルを選ぶ場合でも「カメラといっしょに記録メディアを携行しなければならない」という心配は過去のものになっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR