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» 2010年08月02日 13時57分 公開

SACDの復権、BDオーディオの登場麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

[ 聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]

Blu-rayオーディオの登場

麻倉氏: マルチチャンネルといえば、新しい動きがもう1つあります。それは、キングインターナショナルが8月からノルウェーの「2L」(ツーエル)という高音質レーベルのディスクを国内で扱うことになったことです。正確に言うと、これまで散発的に販売していたものを、きちんとまとめてリリースするということですが、なんと、SACDのマルチチャンネルと“BDオーディオ”をセットにして販売するそうです。

photophoto キングインターナショナルがこの夏からリリースするノルウェー「2L」レーベルの新作群。グリーグのピアノ協奏曲や前衛的なハープのタイトルなど、非常に意欲的な内容になっている

 BDオーディオというのは、BDの規格はまったく変えず、最小限の絵を入れて、容量のほとんどを音に使ったというもの。BDはリニアPCMの192kHz/24bitまでサポートしています。映画では映像に容量の多くを使わなければならないので、音は圧縮(ロスレスを含む)する必要がありますが、逆に音を中心に使えば、すばらしいオーディオディスクものができます。BDは、基本的にマルチチャンネル(7.1もしくは5.1)で、各チャンネルが192Hzのパラメーターを持っています。中には完全に192kHz/24bitのリニアPCMで収録されているマルチチャンネルタイトルもあります。

 現在はネットワーク配信などでも192kHz/24bitのコンテンツが提供されていますが、基本的に2チャンネルです。2チャンネルは、従来のステレオLPの延長であり、アナログ時代から試聴スタイルは変わりません。しかしマルチチャンネルなら、音場が豊かで音楽が生まれる場所の臨場感を味わえる。新時代のマルチチャンネルは、それぞれの音も良いのです。

 2Lは、SACDのDSDファイルを配信するなど、非常に音にこだわっているレーベルです。とくに今回は、音場配置がすごい。これを見てください。中央にマイクを置いて、囲むように楽器を配置しています。

 まず、第1バイオリンが後方左から聞こえます。第2バイオリンは後方右です。前方右からチェロ、コントラバス、その奥にクラリネットとバスーンがいます。ソロバイオリンはさすがに前方中央ですが、前方左側にはなんとビオラがいて、その奥にホルン、パーカッション、ティンパニーなどがいます。それ以外のトロンボーンやトランペットは前方奥に位置します。

 まるで自分がコンダクター(指揮者)の位置にいて、演奏を聴くようなイメージですか。いやそれ以上で、こんな編成配置はちょっとないですね。ホールに聴きに行っても、こんな配置はあり得ません。音楽の生まれる場所の真っ只中にいる臨場感は非常に斬新で、既成概念にとらわれない音場再現、いや“音楽再現”と言えるでしょう。

photo パンフレットに描かれていた録音時の配置。2LのSACDタイトルをマルチチャンネル再生すれば、自宅で指揮者気分?

 従来の2チャンネルは、自分が客席にいて、その前に舞台があって、距離を持って音楽を聴くスタイルのレプリカといえます。しかし2Lは、もっと音楽そのものが客席と舞台という二元論で考えていいのか? と考えたのでしょう。音楽をよりダイナミックに聴かせる配置があるのではないか、という発想が素晴らしいです。

 しかも音がいい。もともとリニアPCMの384kbps/24bitのDXDフォーマットをグランドマスターとして、上はSACDから下はMP3まで制作します。まず一番良いものを作っておいて、ニーズによってパッケージや配信に利用する仕組みですね。これは音源作りのあるべき姿だと思います。

 面白いのは、これらのBDオーディオはリニアPCM収録のため、音質がDVDオーディオ的な“くっきり系”です。しかしSACDは“しなやか系”の音でした。その両方が1つのパッケージで楽しめる。とても面白いですね。

 こうなると、BDオーディオとSACDの両方を1台で楽しめるプレーヤーが欲しくなると思いますが、あまり多くはありません。先月取り上げた海外のユニバーサルプレーヤー(OPPO DigitalとNuForceの「BDP-83SE」など)を候補に挙げておきたいですね。

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