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SACDの復権、BDオーディオの登場麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/3 ページ)

» 2010年08月02日 13時57分 公開
[ 聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]
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DSDディスクを作ろう

麻倉氏: 最後は、SACDと同じ内容を持ったDSD(Direct Stream Digital)ディスクを自分で作ろう、という話です。コルグのポータブルレコーダー「MR-2」は、世界で唯一、SACDと同じDSD方式の1bit録音が可能なモデルです。“生録”というと、リニアPCMが主流になっていますが、音の成り立ちや構造からすると、DSDはすごく魅力的です。しなやかで緻密(ちみつ)な音は、リニアPCMレコーダーではとうてい真似できません。MR-2は、現時点で最も良い音で生録が行えるレコーダーといえます。

photo 麻倉氏愛用のKORG「MR-2」

 ただし、これまではDSDのまま保存したくても記録用のSACDフォーマットが存在せず、汎用的なディスクが作れませんでした。入ってきたオーディオ信号は1bit DSD/2.8224MHzという非常に高いサンプリングレートなので、CDの16bit/44.1kHzなどのフォーマットに変換すると、かなりデータが間引かれてしまいます。

photo KORGの「AudioGate」。動作環境はWindows XP SP2以上。Mac OS X 10.4以降

 それを可能にしたのが、コルグの「Audio Gate」というソフトです。Audio Gateでは、DVD-RなどのDVDメディアにDSDのファイルを書き込んだデータディスク(以下、DSDディスク)を作成できます。その再生機器には、これまではソニーの「プレイステーション3」〔初期型)か、同じくソニーの高級SACDプレーヤーを使うしかなかったのですが、先日ソニーが発表したSACD/CDプレーヤーのエントリーモデル「SCD-XE800」(8月21日発売、3万7800円)がDSDディスクの再生が可能です。これでDSDディスク再生もぐっと身近になります。

photo ソニーの「SCD-XE800」は8月21日発売。価格は3万7800円

 自分でとった学生オーケストラやバンド演奏の音を、生々しく、しなやかな音のままでディスクにできる。SACD文化のクリエイティブな面も充実してきました。SACDが復活して、しかも新しい展開が見えてきましたね。この流れをさらに加速したいです。

麻倉怜士(あさくられいじ)氏 略歴

 1950年生まれ。1973年横浜市立大学卒業。日本経済新聞社、プレジデント社(雑誌「プレジデント」副編集長、雑誌「ノートブックパソコン研究」編集長)を経て、1991年にデジタルメディア評論家として独立。自宅の専用シアタールームに150インチの巨大スクリーンを据え、ソニー「QUALIA 004」やBARCOの3管式「CineMAX」といった数百万円クラスの最高級プロジェクターとソニーと松下電器のBlu-ray Discレコーダーで、日々最新AV機器の映像チェックを行っている、まさに“映像の鬼”。オーディオ機器もフィリップスLHH2000、LINNの CD12、JBLのProject K2/S9500など、世界最高の銘機を愛用している“音質の鬼”でもある。音楽理論も専門分野。

 現在は評論のほかに、映像・ディスプレイ関係者がホットな情報を交わす「日本画質学会」で副会長という大役を任され、さらに津田塾大学の講師(音楽史、音楽理論)まで務めるという“3足のワラジ”生活の中、精力的に活動している。

著作

「ホームシアターの作法」(ソフトバンク新書、2009年)――初心者以上マニア未満のAVファンへ贈る、実用的なホームシアター指南書。

「究極のテレビを創れ!」(技術評論社、2009年)――高画質への闘いを挑んだ技術者を追った「オーディオの作法」(ソフトバンククリエイティブ、2008年)――音楽を楽しむための、よい音と付き合う64の作法

「絶対ハイビジョン主義」(アスキー新書、2008年)――身近になったハイビジョンの世界を堪能しつくすためのバイブル

「やっぱり楽しいオーディオ生活」(アスキー新書、2007年)――「音楽」をさらに感動的に楽しむための、デジタル時代のオーディオ使いこなし術指南書

「松下電器のBlu-rayDisc大戦略」(日経BP社、2006年)──Blu-ray陣営のなかで本家ソニーを上回る製品開発力を見せた松下の製品開発ヒストリーに焦点を当てる

「久夛良木健のプレステ革命」(ワック出版、2003年)──ゲームソフトの将来とデジタルAVの将来像を描く

「ソニーの革命児たち」(IDGジャパン、1998年 アメリカ版、韓国、ポーランド、中国版も)──プレイステーションの開発物語

「ソニーの野望」(IDGジャパン、2000年 韓国版も)──ソニーのネットワーク戦略

「DVD──12センチギガメディアの野望」(オーム社、1996年)──DVDのメディア的、技術的分析

「DVD-RAM革命」(オーム社、1999年)──記録型DVDの未来を述べた

「DVD-RWのすべて」(オーム社、2000年)──互換性重視の記録型DVDの展望

「ハイビジョンプラズマALISの完全研究」(オーム社、2003年)──プラズマ・テレビの開発物語

「DLPのすべて」(ニューメディア社、1999年)──新しいディスプレイデバイスの研究

「眼のつけどころの研究」(ごま書房、1994年)──シャープの鋭い商品開発のドキュメント


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