年間、900万〜1000万台の間で推移してきた日本のテレビ市場。その安定した売り上げ推移は、地上デジタル放送への移行やエコポイント導入によって波が生まれ、今年は平年の2倍程度のテレビが販売されると言われている。ただし、波には山があれば谷もある。外的な要因で生まれた”山”の後には、大きな谷が待っている。今年生まれた山が谷に変わるのは、おそらく2012年ぐらいになるだろう。
これの大きな山谷は、テレビを販売する家電メーカーにとってはやっかいだが、大きな山が生まれることで期待できる効果もある。新しい提案を行い、新しい使い方を定着させるきっかけをつかむには、絶好のチャンスともいえるだろう。なにしろ、通常の2倍もの台数が売れるのだから“仕込み”をするなら今だ。
では、どんな“仕込み”が有効だろうか?
おそらく、「テレビをインターネットに接続してもらう」という難題(これがなかなか大変なことなのだ)をクリアするための仕込みも、この時期に行うべきだろう。テレビにイーサネット端子が装備されるようになって久しいが、その活用の幅はまだ狭く、相互の運用性もさほど高くない。DLNAにしろ、ネット経由の映像配信にしろ、テレビに新しいアプリケーションのインフラになってほしいと業界全体が考えているのであれば、その仕込みは今やっておく必要がある。
仕込みを今行うべき理由はもう1つある。それは地デジ対応の単体チューナー市場が、さほど大きくないにしても、一定期間はそれなりの安定した売り上げを出すと考えられるからだ。
単体デジタルチューナーにはさまざまなタイプがあり、中にはかつてのBSデジタルチューナーと同様の、とりあえず地上デジタル放送を受信するだけのシンプルな製品もある。しかし、一方で最新のテレビと同じ機能を持つチューナーの販売も計画されている。
例えば、東芝のREGZAチューナーが実現したUSB HDDへの録画機能。ほかにもDLNAクライアントとしての機能や「アクトビラ・ビデオ フル」対応などが考えられるだろう。昨今のテレビは使用するLSIの統合・大規模化が進んでいるため、中途半端に機能を削るより、実績のあるテレビ向けのソフトウェアを流用したほうが良いケースもある。
ユーザーから見ても、まだ購入して数年のテレビなら、チューナーユニットで最新機能を付加できる方が良いだろう。また、ハイビジョン対応ブラウン管テレビを使っている場合は、その画質の良さから手放せないという人もいるのではないだろうか。フルHD時の解像感に関しては液晶やプラズマの方が良い面も多いが、色再現性や階調のつながりなど、アナログ機器であるブラウン管の良さは今でもある。それが最新機能を背負えるようになれば、と思う人は意外に多いのではないだろうか。
「いまさら単体チューナー?」と思うなかれ。イマドキの単体チューナーは馬鹿にできない。今月は、今再び単体チューナーに注目する理由について話を進めていくことにしよう。
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