プラズマと液晶を対比する上で、昔も今も変わらないことがある。それは、それぞれの方式の特長であり、その特長が長所や短所を生み出しているからだ。それぞれの方式ごとに、長所を伸ばし、短所を改善する努力が続けられているが、基本的な特徴を根本から覆すものではない。
例えば視野角に関しては、たとえIPS液晶パネルであってもプラズマの方が広いし、動画表示能力に関してもバックライトスキャン付き4倍速になったとしても短残光化したプラズマにはかなわない。一方、明るさや消費電力に関しては(この二項目に関してはパネルサイズが大きく関与してくるので一概にはいえないが)液晶に有利な数字が出ることが多い。さらにはコントラストや絵の質感、ホワイトバランスの正確さなども含めると、比較はとても複雑になるものだ。
両者は”同等の強さを持つ異なる金属”が、実際には異なる物性を持っているため長所と短所が異なるように、単純に比較できるものではない。このため総合的に判断する必要はあるが、各々が判断する材料として、今回は動画表示能力と明るさについて書いておきたい。
動画表示能力は、APDC(Advanced PDP Development Center)が開発した動画解像度のテストがある。APDCはプラズマパネルを開発している(開発していた)企業で組織された組織であり、通常は動画表示能力を示すAPDCのテストは液晶テレビでは公開されない。(ただし、パナソニックや日立製作所は液晶テレビでもAPDC基準による動画解像度を公開している場合が多い)単位は“TV本”で、一定基準の動きがある映像の中で、走査線数に換算して何本分を表現できるかという数値だ。
このテストが公開された当初、フルHDプラズマの900本程度だったが、一昨年ぐらいにプラズマは1080本(つまり表現できる解像度の上限)にまで達した。今年2月に発売された3Dプラズマは、短残光蛍光体や発光順の変更などにより応答性が高まり、スペック上は1080本で変わらない(これ以上の走査線数が存在しないため)ものの、実際の動画の中では、よりディテールが明確に描かれるキレの良い映像となった。
一方、液晶パネルも3D対応したことに伴って、プラズマと同じように動画解像度が高まっている。なぜなら3D表示には4倍速が必須(従って動画補完を行えば動画解像度が高まる)な上、3D表示の質を高めるには高速バックライトスキャンが可能なLEDバックライトを採用することが不可欠だからだ。
つまり4倍速の240Hz表示に加え、480Hzでのバックライトスキャンによるインパルス表示を組み合わせることで、動画解像度は高くなっている(なお、3Dテレビでなくとも、同様のメカニズムで動画性能を上げているものであれば等しい性能がある)。この時の動画解像度は、前述のAPDCテストでいうところの1080TV本に相当する。つまりスペック値ではプラズマと同等になっていることになる。
スペックでは同じレベルにまで進化したと言えるのだが、実際には前述したように上限数値以上の部分で差がある(APDCテストが想定しているよりも速い動きでは差があるという意味)。これを液晶でも充分な性能と読み取るか、プラズマの優位性は動かずと見るかは人それぞれだろうが、個人的にはまだ明確な違いがあると感じている。
一方、明るさに関しては、プラズマの発光効率向上もあって、必ずしも液晶の方が有利とは断言できない。42インチクラスならば同等、50インチ以上ならばプラズマの方が明るさの面では有利といえるほどだ。
ただし、それは画面の一部が明るい場合の話で、全面が白、あるいは明るい色で埋められている場合は、全体の輝度が下がってしまう。これはプラズマの特性であり、避けられないことだ。例えば白背景にロゴが浮かんでいるような場面では、プラズマは全体に暗く沈んだ表示になってしまう。一方、全体が暗い背景に支配され、そこに点光源が散らばるようなシーンでは、各光源が輝くように描写される。これに対して液晶はバックライトの明るさで各輝点の最大の明るさが決まるため、映像内容に応じて明るさ感が変化することはない。
つまり、明るさ(眩しさ)をより強く感じる、画面全体が明るい状況ではプラズマは暗く見えてしまうことがある。明らかに暗くなってしまうような映像パターンは、実際の映像にはあまり多く含まれるものではない。映画やドラマはなおのことで、これら自然画ならば輝度低下を感じることはないので欠点とは言えないのだが、コマーシャルのロゴシーンなどで目立つこともあり、結果としてプラズマは暗いという印象が持たれているのかもしれない。
しかし、ピーク輝度が抑えられる状況があることは確かであり、それをどう判断するかは、動画解像度の場合と同じく、実際にテレビを選ぶあなた次第だ。次週も引き続き、両者の特長の違いを中心に話を進めていこう。
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