10月5日から9日まで千葉・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2010」は、18万人以上の入場者を集め、盛況のうちに閉幕した。今年のCEATECでは3Dテレビやスマートフォンが注目を集めたが、AV評論家・麻倉怜士氏はどこに着目したのだろうか。各社の展示内容を含め、詳しく話を聞いた。
麻倉氏: 東芝は昨年、CEATEC開幕前日に「CELL REGZA」を発表してナンバーワンのトレンドセッターになりましたが、今年も裸眼立体視対応の「グラスレス3Dレグザ」とクラウドテレビ構想の「レグザ Apps コネクト」で注目度はダントツでした。とくにグラスレス3Dレグザの展示コーナーは、2時間待ち、3時間待ちが当たり前の状態でしたね。
やはりCEATECは、「トレードショー」(商談会)ではなく、トレンドショーです。昔は、新しいトレンドはソニーから出てくることが多かったのですが、今は東芝。来場者は今後のトレンドを探りに来るのですから、その期待に応えた東芝が注目を集めたのは当然です。昨年はCELL REGZAで新しいテレビのあり方を提案し、今年は他社が専用メガネを使っているときに裸眼立体視に挑戦しました。レグザ Apps コネクトにも同社の先取り精神を感じます。今年は、まるで東芝のためにあるCEATECでした。
麻倉氏: 今年のソニーは“がっかり大賞”です。巨大な3D対応大型LEDディスプレイ(技術参考展示)は迫力ありましたが、本来ソニーが提案するべきなのは、あんなものではないでしょう。新しい切り口でのAV機器の使い方やライフスタイルの提案があるべきです。巨大な一枚板の展示など、まったくソニーらしくありません。しかも、子会社のソニーPCLに頼っていました。
9月のベルリンショー(IFA 2010)ではそれがありました。IPTVやオンラインサービスの「Qriocity」、テレビ番組のキャッチアップサービスなど、ネットとテレビを利用したライフスタイルの具体像が見えました。IFAには徹底的にリソースを投入し、6000平方メートルものブース(IFA最大)で大規模展示を敢行しました。これは、ソニーがCEATECよりIFAを重視していることの証拠ですね。IFAでは3D対応プロジェクター「VPL-VW90ES」の視聴ルームも用意していましたが、今回のCEATECではブースの隅にぽつんと展示機を置いただけです。
ソニーはイベント予算を「International CES」と「IFA」に振り分けて、CEATECは時期的にディーラーコンベンションと同じ内容になってしまうから、適当にお茶を濁したのでしょう。 だとしたら大間違いです。一般のユーザーは、たくさんの新製品の情報を望んでCEATECにやってくるのですから、その期待を裏切ってはいけません。一般ユーザーはディーラーコンベンションには入れないのです。一般ユーザーを軽視するとひどい展示になる、という見本でした。来年はがっかりさせないでください。
麻倉氏: パナソニックブースも今回は残念なことにAV関連の展示が後ろ(メインステージの裏)に下がって、エコが前面に出ていました。もちろんエコロジーは大切ですが、それはインフラであって、表に出るものではないはずです。守りの姿勢に見えます。パナソニックのAV機器はラインアップも多いので、後ろではなく、前で見せてほしかったですね。
AV関連の展示では、コンパクトなBlu-ray Discレコーダーがユニークでした。レコーダーは、VHS時代からのスタイルを踏襲する必要はないので、そろそろ展示機のような製品が出てきても良いはず。例えば、1986年に日本ビクターが「HR-D470」という、VHSカセットを縦に入れる(サイドローディング式)ビデオデッキを発売しました。横幅がミニコンポと同じで、とてもキュートでした。
薄型テレビは、既に一家に1台の時代ではありません。リビングだけでなく、寝室や書斎といった個室にも薄型テレビが置かれています。しかし、小型テレビの横に置くレコーダーが43センチの幅を持っている必要はありません。メーカーはもっと製品のバリエーションを用意して、ライフスタイルに応じて選べるようにしてほしいですね。
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