――番外で1ページ使ってしまいました。いよいよトップ10です
麻倉氏:2010年の第10位は、東芝のインテグラル方式裸眼3Dテレビ「グラスレス3Dレグザ」です。裸眼3Dテレビは、まだそろりとしたスタートですが、3Dの進展を考えると、ある時点で裸眼立体視が入ってくるのは必然で、1つの理想形ともいえるでしょう。
今まで、インテグラル方式をやるなら「スーパーハイビジョンが前提」と言われていたのですが、東芝は独自の切り口で、この時期に登場させました。同社は優れた2D→3D変換技術を持っており、それを新しい光学技術と融合させた形です。
一般的に、レンチキュラーシートを用いた裸眼立体視ディスプレイは、画素からの光の方向を制御して光線を再生しますが、従来は均一に光線を再生しようとすると視野角が狭くなるという課題がありました。東芝の技術は、レンズと画素の周期(=n)に対して、レンズに対応する画素の数をn個またはn+1個の2値として、対応するレンズに対応する画素を任意に選択できるようにしています。光線に出射角を付けてデッドゾーンをなくし、より自然で見やすい3Dディスプレイを実現しました。この技術は、平成22年度全国発明表彰の「21世紀発明賞」を受賞しています。
また、開発をリードした研究開発センターの福島理恵子氏は日経ウーマン誌(日経BP社)で「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の1位に輝きました。私は同誌で「卓抜な視点と、開発リーダーシップが特に優れていた」と福島氏の業績についてコメントしています。
20V型のグラスレス3Dレグザ「20GL1」を見ると、解像感は低いものの、自然で比較的きれいな3D映像です。専用メガネを使う方式では視差のみの立体映像となり、フォーカス感と輻輳角が離れてしまいますが、裸眼立体視の場合は運動視差が加わり、立体物を見ているのと同じで自然な立体感となります。
裸眼3Dがいずれ市民権を得る、そう教えてくれたグラスレス3Dレグザの意義は大きいと思います。この時期に商品として発売することは高く評価されるべきですし、今後の大画面への発展もおおいに期待できますから、当然ランク入りですね。
麻倉氏: 第9位は、8月に取り上げたSACD復権の話題です。きっかけは、ユニバーサル ミュージックが名盤タイトルを「SA-CD 〜SHM仕様〜」で発売したことですが、その前段階として2009年にTEACのエソテリックブランドからクラシックの名盤が発売されてヒットしたという背景があります。
一度はSACDのリリースをやめたユニバーサルでしたが、本物の芸術であればSACDにもニーズがあると分かったのでしょう。新素材の採用をはじめ、DSD方式の特性が生きるシングルレイヤーとし(通常のCDプレーヤーでは再生不可)、表面は迷光を排除するために緑にしています。そしてロスレス圧縮のマルチチャンネルでなく、非圧縮の2チャンネル収録。ディスク技術から音源、収録に至るまで、考え得るすべてを盛り込んで最高のSACDを作り出しました。
最近発売されたマウリツィオ・ポリーニの「ショパン:ポロネーズ集」をCDと聞き比べたところ、SACDは音の表面に抑揚があって、和音の倍音の広がりに色がついているように感じました。演奏者の気持ちの入れ方まで伝わってきて、やはりすごい。販売も好調で、メーカーの予想以上に売れているようですね。
今年は、ソニー、オンキヨー、デノン、マランツなどがSACDプレーヤーを発売し、「e-ONKYO」でDSD方式による音楽配信が始まるなど、高音質音楽に注目が集まっています。(→オンキヨー、DSD方式による高音質音楽配信を開始)。中でもSACDのような光学ディスクは、オーディオファンにとって手になじんだメディアですから、これからもおおいに頑張ってほしいですね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR