「3Dテレビ」とひとくくりにされる立体視ディスプレイ。しかし注意してみると、特殊なメガネを必要とする「眼鏡式」、裸眼で立体視可能な「裸眼式」の2系統に大別できることが分かるはず。現在の主流は前者、特に左右のシャッターが高速に開閉するメガネを用いるフレームシーケンシャル方式が、家電各社の主戦場となっている。
しかし、視聴時に専用メガネを装着することへの消費者の抵抗は大きく、3Dテレビの本命は裸眼式との見方も根強い。実際、新製品が一巡した夏以降は、眼鏡式3Dテレビの売れ行きが伸び悩んでいるとの報道もある。
そこに発表された、東芝の3Dテレビ「グラスレス3Dレグザ。インテグラルイメージング(光線再生)方式を採用、裸眼での立体視が可能となった。当初展開するGL1シリーズのパネルサイズは20V/12Vと小型だが、大画面モデルも開発中という。
グラスレス3Dレグザに採用されたインテグラルイメージング方式では、位置や角度が異なる複数の映像を同時に映し出すことにより、立体視を可能にする。視差を利用することは眼鏡式と同じだが、メガネの代わりに液晶パネル上に特殊なレンズシート(垂直レンチキュラーシート)を貼ることで、左右両眼に異なるアングルの映像を届けることを可能にしている。
今回発表されたGL1シリーズでは、CELL REGZAで実績のある2D・3D変換技術と専用LSIの働きにより、1つのフレームから9つの微妙に異なる映像(9視差映像)をリアルタイムに表示する。インテグラルイメージング方式では、視点数に応じて解像度が低下するため、一般的な液晶パネルとは解像度が大きく異なっている。
20V型を例にすると、LEDバックライト液晶パネルの画素数は約829万。それが水平方向のみレンズ特性を持つ垂直レンチキュラーシートを介すことにより、視聴者の目には1280×720ピクセルの解像度として映るしくみだ。
インテグラルイメージング方式には、長時間視聴しても目の負担が少なく視域も広いという裸眼式ならではの利点のほかに、視聴者の視点移動に応じて映像の見え方が変化する「運動視差」に対応するという特徴がある。より自然に3D映像が見えるため、いわゆる「3D酔い」を回避する効果も期待できる。
とはいえ、眼鏡式とは異なる生産ラインが必要なこともあり、発表では20V型の実売想定価格が24万円前後と割高感が強い。普及には大画面対応とともに、量産化によるコスト削減が急務だろう。
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