家庭用プロジェクターがいまひとつ盛り上がらない理由としては、設置場所の制約とファンの回転音の問題が挙げられる。大画面のニーズはあるが、部屋の大きさはせいぜい20平米前後という日本の住宅事情もあり、この問題への対処なしにもう一段の需要増は期待できない。
9月7日にソニーが発表した家庭用プロジェクター「VPL-VW90ES」は、設置場所と回転音という2つの問題に対し、新開発のプロジェクター用液晶パネル「SXRD」(Silicon X-tal Reflective Display)で応えた。1系統の光学エンジンでフルHDと3D映像に対応するのは、業界初の試みだ。
新開発の0.61型SXRDは、光源に200ワットの高圧水銀ランプを採用。エンジンの効率化により、1000ルーメンという家庭向け製品としてはまずまずの輝度を達成している。入力した信号の輝度レベルに応じてアイリス(絞り)を変える制御機構も「アドバンストアイリス3」に更新、15万:1という高いコントラスト比を実現した。
家庭用という点では、静粛性にも注目したい。エアフローシステムの見直しにより排熱性が改善、内蔵ファンの低回転化が可能となりファンノイズは約20dbに押さえられている。1000ルーメンという輝度、15万:1というコントラスト比をあわせると、明るく静かなプロジェクターに仕上がっているといえる。
3D対応は、前述した明るさにくわえ、240Hzという高フレームレートによって実現されている。家庭向け3D表示方式の主流となりつつあるフレームシーケンシャル方式(参考:「リフレッシュレート」――3D液晶テレビに「240Hz」は欠かせない?)では、フレームレートが低いと残像感が生じるだけでなく、左右の映像が2重に見える「クロストーク現象」が発生するが、240Hz以上では問題ないとされる。
3Dメガネのレンズシャッター開閉を同期させる仕組みもポイント。プロジェクター本体のレンズ周縁に3Dシンクロトランスミッターを内蔵、同期信号をスクリーンに反射させることにより、3Dメガネのレンズシャッター開閉を制御するのだ。なお、別売の3Dシンクロトランスミッターを導入すれば、5メートル以上の距離でも利用できる。
3D対応は液晶テレビが先行しているが、映画館で当たり前のように3D映像を楽しめる今となっては、40インチクラスでも物足りなさを感じるほど。その点では、スクリーンまで5メートルの設置距離で120インチ相当の画面を実現できるプロジェクターが断然有利といえる。
しかし、片目ずつ異なる映像を見せるフレームシーケンシャル方式では、その構造上輝度が半減するうえ、3Dメガネの偏光フィルターにより明るさはさらに低下する。光学エンジンを1系統とすることは、製造コスト抑制も重要な家庭向け製品としてはひとつの決断だが、さらなる明るさを求める消費者の声も聞こえてきそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR