大画面テレビが恐ろしい勢いで売れた2010年。一方、AVアンプもヴィンテージ・イヤーというにふさわしい豊作年で、昨年の秋から暮れにかけて各社から発売されたAVアンプには、傑作・力作が数多い。筆者はそのほとんどすべての製品をテストしたが、30万円を超える最高級クラスの中でいちばん音がよいと思ったのが、前々回の本欄でご紹介したパイオニア「SC-LX83」。いっぽう10万円台の中級機の中でもっとも出来がよく、これは破格のお値打ち品だと感心したのが、ヤマハ「RX-V2067」である。今回はこの製品をクローズアップし、その魅力の一端をご紹介してみたい。
昨年秋、ヤマハは3モデルの実力派AVセンターを発売した。上から3067、2067、1067という数字がつけられた「RX-Vシリーズ」である。最上位機の「RX-V3067」は23万3100円で、ここでご紹介する「RX-V2067」は17万8500円と約5万5000円の値段差があるが、見た目もスペックにもほとんど差はない。反射音を巧みにチューニングして美味しい響きを付加する同社独自のシネマDSP再生の拡張モードに若干の違いがある程度だ。
実際に音を聴き比べてみると、上位機の3067のほうがCDを2チャンネル再生したときなど、確かにお金のかかったよく磨き込まれた美音を聴かせてくれることが分かる。一方でBD ROMで最新映画のサラウンドサウンドを試してみると、音を磨きすぎない2067のざっくりとした力感指向の音調がぴったりフィットするケースもあり、これは予算で選ぶというより、音の好みでどっちを買うのかを決めればよいという違いだと思った。ぼくはどちらかというと、3067よりも本機2067の音のほうが好きである。
本機はBD ROMに収録されたドルビーTrue HD やDTS HDマスターオーディオなどの超高音質5.1ch ロスレスコーデックに対応したサラウンドデコーダーを搭載するが、130ワットのパワーアンプを7チャンネル分搭載しており、フロントハイトスピーカーを加えた7.1ch再生が可能だ。この場合、反射音をフロントL/R スピーカーとフロントハイトスピーカー両方から反射音を放射する同社独自のシネマDSP3D再生となるが、このプリセットモード(例えば『Drama』とか『SciFi』)の音が実にすばらしく、この再生モードで得られる雄大な音場表現はまさにワン&オンリー、圧倒的な魅力を有していると思う。
ヤマハは約20年の長きに渡って、世界中の名ホールの実測音場データを基にさまざまなチューニングを施して映画再生にふさわしい心地よい響きを造り込んできたわけだが、ここにきてその努力が大きく花開いたような気がする。
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