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パイオニア「SC-LX83」で聴く「9 <ナイン>」の埋もれていた音山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」Vol.53(1/2 ページ)

» 2010年11月25日 23時30分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 進化するHD映像とHDオーディオ、その両者を集中制御して、マルチチャンネルでいい音を提供しなければならないAVアンプ(レシーバー)は、数あるAV機器の中で最も開発難易度の高い製品ジャンルだと思う。だからこそ、そのメーカーの真の実力が厳しく問われるわけだが、ことこのジャンルに限っては世界中で日本メーカーの独壇場といえる状況が続いており、この国に住むAVファンの一人として、少し誇らしい気持になるのだった。

 とくに今年は20万円台のモデルに力作が多い印象。ヤマハ「RX-V3067」、ソニー「TA-DA5600ES」、デノン「AVR-4311」、パイオニア「SC-LX73」、オンキヨー「TX-NA1008」などいずれ劣らぬ好モデル。どれを買っても大きな満足が得られることは間違いないと思う。ただし、AVアンプはいかに使いこなすかが肝要だ。各機種すべてオートセットアップ機能が充実しているので、最初はそれに頼って各チャンネルのレベル合わせやベースマネージメントを行なえばよいが、やはり最後は自分の耳で微調整することをお勧めする。AVセンターのサラウンド再生は、ほんのちょっとしたレベル調整で得られる音場感が激変することがあるからだ。この調整ばかりは体験を積んでいくしかないのだが……。

パイオニア「SC-LX83」

 さて、それら20万円台のAVアンプの出来のよさに感心していたつい先日、33万円のプライスタグが付けられたパイオニア「SC-LX83」を自室でじっくり使いこなす機会に恵まれた。そして、この製品の途方もない可能性の豊かさを実感、この秋発売されたAVアンプの中でダントツに高性能な製品だと確信した。

 本機は、デンマーク工科大学とバング&オルフセンの協同開発によるデジタルアンプ「ICEパワー」をベースにした「ダイレクトエナジーHDアンプ」を7ch分積んでいるが、このアンプ技術の採用は本機で4世代めとなり、練達のエンジニアが吟味を重ねた各種カスタムパーツがふんだんにおごられ、その音質は驚くほど練り上げられている。

SC-LX83のフレーム(左)と背面のインタフェース類(右)。HDMI入力はフロントの1系統を含めて6系統。HDMI出力は2系統。本体サイズは420(幅)×460(奥行き)×200(高さ)ミリ、重量は18.5キログラム

 また、同社製AVアンプで初めて旭化成製32ビットDACチップを採用、このDACを用いた独自のビット拡張機能が搭載されている。実際に英国のロック・バンド「10cc」の2008年版SHM-CDリマスター盤「オリジナル・サウンドトラック」(1975年作品)から名曲『アイム・ノット・イン・ラヴ』でそのオン/オフで実験してみたが、その効果の大きさに目を見張った。この機能を入れると、この曲の大きな聞きどころとなっているコーラスの響きがに俄然(がぜん)雄大になり、スピーカーが消えて人の声の壁が眼前に大きく立ち上がったような錯覚を抱いた。ちなみにこのコーラス、メンバーのうち3人による48人分のユニゾンを13のピッチで録音、624ヴォイスをつくって手間隙かけてミックスしたという。なんという壮絶なアナログ録音手法! その面白さがこの32ビット拡張モードでありありと実感できた。

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