それからもう1つ、一度体験すれば誰もがその効果のすばらしさを実感できるに違いないと思ったのが、「PQLSビットストリーム」機能だ。PQLSとは、「プレシジョン・クォーツ・ロック・システム」の略で、同社製対応BDプレーヤーと本機をHDMI接続し、本機内蔵のクロックでそのプレーヤーも制御するというもの。HDMI伝送時に音質に悪影響を与えるジッター(時間軸上の揺らぎ)を抑えようと発想されたものだ。以前はPCMデータのみに有効だったこの機能が、本機ではドルビーTrue HDやDTS HDマスターオーディオなどのロスレス・サラウンド音声のビットストリーム伝送時にも効くようになったのである。
PQLS対応の同社製BDプレーヤー「BDP-LX53」との組み合わせで、最新のドルビーエンコーダーが用いられたというドルビーTrue HD 5.1ch収録のティム・バートン制作CGアニメ「9 <ナイン>9番目の奇妙な人形」を“PQLSビットストリーム”オンで観たが、これが驚きの超絶サラウンド・サウンドだった。人類滅亡後の廃墟を走る回る麻布でつくられた人形たちの、まさにその街角で聞いているであろう音が臨場感豊かに迫ってくるのだ。とくに驚いたのが、フロントのL/Rスピーカーと後方のサラウンドスピーカーの間に音がみっちりと満たされ、音場空間に「疎密」がなくなったこと。ぼくの部屋でこんな緻密なサラウンド・サウンドを聴いたのは初めての経験といってよい。
それから個人的に最も興味深かったのは、本機のウラ機能ともいえる「プリアンプ・モード」。これは、内蔵のダイレクトエナジーHDアンプは使用せずに、本機のプリ出力を外部のパワーアンプにつないだときに動作するモードだ。本機を「スピーカー/オフ」にするとこの状態に入り、内蔵アンプに送られていたアイドリング電流が完全に止められる仕様となる。各チャンネルあたり6ワットほどの待機電流が流れているようで、これが7ch分なので40ワット強。それが完全に止められることになるわけだが、実際にぼくの部屋にある外部アンプとつないでこのモードを試してみたところ、予想をはるかに上回る効果が実感できた。
先ほど観て感激した「9 <ナイン>」に、まだまだ掘り起こされていなかった音があったことを思い知らされたのだ。廃墟の街を歩くナインと呼ばれる人形が耳にするさまざまな音がくっきりと浮かび上がり、思わず部屋の中を見回してしまったほど。このモードを使用することで、ノイズレベルがいっそう下がり、ローレベル方向のダイナミックレンジが拡張するのは間違いない。32ビット・ハイサンプリング機能、PQLSビットストリーム機能、それにこのプリアンプ機能と掛け合わせていくたびに、自分のシステムの音がどんどん磨き上げられていく快感に酔いしれた「SC-LX83」との巡り会いだった。
こんなに感激させてくれたのだから本機を自室に入れないわけにはいかない。ぼくはすぐにオーダーの電話をかけたのだった。
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