昔からのAVファンならきっと身に覚えがあるだろう。サラウンドシステムを構築するなら、すべてのスピーカーを同じ製品(あるいは同メーカーの近いシリーズ)に統一し、設置時にはメジャーなどで距離を測りながら理想的な位置と角度に設置する。それが“常識”である。
しかし、日本の住宅事情を考慮すると、なかなか理想的な場所にスピーカーを置くことは難しい。同じスピーカーを複数セット購入することも、最初からホームシアターを志向していなければ考えもしないはずだ。結局、スペースとコストの両面で「サラウンドはハードルが高い」というイメージが定着してしまったと思う。
しかしソニーによると、「自動音場補正機能は、ホームシアターのハードルを下げるように進化している」という。同社のAVアンプでは、自動音場補正技術の「D.C.A.C.」(DIgital Cinema Auto Calibration)に続き、昨年の「TA-DA5500ES」からスピーカーの位相補正技術「A.P.M.」(Automatic Phase Matching)を搭載。室内の定在波の影響やスピーカー同士の音響特性の違いを測定し、パラメトリックイコライザーで音場を整えるのが「アドバンストD.C.A.C.」で、それだけでは補正できないスピーカーの位相特性を合わせてくれるのがA.P.M.だ。チャンネル間のつながりが向上し、同じスピーカーで構築したシステムのような音を体験できるようになった。
さらに10月下旬に発売した「TA-DA5600ES」では、新たに「スピーカーリロケーション with A.P.M.」が採用されている。その名の通り、スピーカーの位置がずれていても信号処理で補正してくれる「スピーカー再配置技術」だ。TA-DA5600ESの自動音場補正機能では、まずA.P.M.により、サラウンドとセンターに使っているスピーカーの位相特性をフロントスピーカーに合わせる。これは、「フロントの2chがユーザーのリファレンス機器である場合がほとんど。一番お金をかけているはず」(同社)という理由による。
続いてスピーカーリロケーションの出番。スピーカーの位置がずれている場合、周囲にある複数のスピーカーから出る音の音圧配分を調整して、理想的な場所にファントム定位させる仕組みだ。ファントムというと信号処理を駆使した疑似サラウンドを想像するかもしれないが、本来は2本のスピーカーで中央に定位させる“ステレオ”と同じ理屈。もちろん前段階として音圧配分など複雑な処理を行っているわけだが、最終的には実になじみ深い原理でスピーカーを“再配置”する。
例えば、室内にピアノなど移動しにくい大きなものがあってSR(右サラウンドスピーカー)をずらして置くしかない場合。SRの近くにある、R(右のフロントスピーカー)やSBR(右のサラウンドバック)、そして位置のずれたSRの音圧配分をコントロールして、本来あるべきSRの位置にファントムスピーカーを生成する。これを応用して、実際にはないスピーカーも設置したような音場を作ることもできる。例えば5.1ch分しかスピーカーが設置できなくても、サラウンドバックの2chを追加して7.1ch化できる(TA-DA5600ESは7chアンプを搭載している)。
ホームシアターのハードルを下げる「スピーカーリロケーション with A.P.M.」。その効果を一言でまとめると、「とにかくスピーカーの数をそろえれば、しっかりとサラウンド感が出る」(ソニー)。押し入れに眠っている古いミニコンポのスピーカーでもいいから、とにかくスピーカーを5本くらい集めて、できる範囲で配置する。あとはAVアンプにおまかせでいい。確かに、すごくハードルが下がった気がする。
実際の効果については近日中に掲載するレビュー記事を参照してほしいが、ネット上では、既にTA-DA5600ESを手に入れた人たちの「音のつながりがよくなった」といった書き込みも散見されるようになった。スピーカーの配置場所が原因でサラウンドをあきらめていた人は、もう一度検討してみてはいかがだろうか。
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3D映画などの臨場感ある音場をさらに高める新機能を搭載。7.1ch対応AVアンプ。24万8000円(税込、11月18日現在)
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