ITmedia NEWS >

15年ぶりのセパレートアンプ、オンキヨー「Reference Hi-Fi Series」で楽しむハイレゾ音源の数々山本浩司のアレを“聴く”なら是非コレで!(2/2 ページ)

» 2011年03月09日 14時47分 公開
[山本浩司,ITmedia]
前のページへ 1|2       
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 M-5000Rは、出力素子に片チャンネルあたり4パレレル・プッシュプル、つまり8基の東芝製大電流型バイポーラ・トランジスタを充てた強力なステレオパワーアンプ。また、本機の出力段にはオンキヨー製AVアンプでお馴染みの3段インバーテッドダーリントン回路が採用されている。これは、出力素子の前に2つの小信号トランジスタを並べて低電圧駆動し、出力トランジスタのインピーダンスを下げて駆動力を向上させる手法。2段目のトランジスタの半導体の配列を反転させているのがミソで、この手法により安定な低電圧駆動を実現しているわけだが、この手法は発振しやすく、海外の超高級アンプ以外で採用例はほとんどない。AVアンプを含めて近年のオンキヨー製アンプは、国産製品とは思えない力感あふれるダイナミックなサウンドを聴かせるが、その秘密の一端がこの回路手法にあるといっていいだろう。

振動抑制を徹底したM-5000Rの筐体。フロントとサイドのパネルにはアルミ押し出し材、定番には肉厚のスチール板を使用している

 この「Reference Hi-Fi Series」には、CDプレーヤーのC-7000Rもラインアップされている。カタログスペックを見ると、本機のDACチップは24ビット・タイプ。じっさいに10ccのCD『オリジナル・サウンドトラック』(1975年)から永遠の名曲「アイム・ノット・イン・ラヴ」を再生して、プリアンプのP-3000Rと外来ノイズに強いデジタル・バランス伝送が可能なAES/EBU接続とアナログ/アンバランス(RCA)接続で両者の音を聴き比べてみた。P-3000Rに積まれたDACチップが32ビット・タイプのより高級なデバイスであることがその理由の1つだと思うが、やはり両者をデジタル接続したほうが広々とした空間感が得られ、よりダイナミックな音が聴けることが分かった。

CDプレーヤーの「C-7000R」(16万8000円)。音声出力端子はデジタル3系統(光、同軸、AES/EBU)およびアナログ1系統

 また、C-7000Rは、サンプリング周波数44.1kHzのCDデータを4倍の176.4kHzにアップサンプリングするD/Dコンバーター機能をもっている。「アイム・ノット・イン・ラヴ」でそれを試してみたが、この曲で聴ける複雑なコーラスのひびきがよりいっそうきめ細かくなり、音のキャンバスがよりいっそう大きくなった効果が確認できた。いっぽう土くさいアメリカン・ロックなどを聴くと、ややひびきに違和感が生じる。これは聴く音楽と好みに合わせて使い分ければよいだろう。

 次に、再生ソフトに「Foobar2000」(フリーウェア)をインストールしたPCとC-7000RをUSB接続して、いくつかのハイレゾファイルを聴いてみたが、e-onkyo musicでダウンロードできるMAレコーディングスの「セラ・ウナ・ノーチェ」(96kHz/24ビットWAVファイル)がすばらしかった。この音源は、アルゼンチンの修道院教会でB&Kの無指向性マイクを2本吊ってワンポイント・ステレオ録音されたもの。マイクの下に車座になって演奏するメンバーのようすが目に見えるかのようなプレゼンス感豊かな音が聴けておおいに驚かされた。加えてヴォーカルのつややかな表現、アコースティック楽器のひびきの澄明さにこのセパレートアンプの実力の高さを確信した。

 また、2009年の末に発売されたビートルズUSB BOXから『アビィロード』の「カム・トゥゲザー」を聴いたが、ビートの効いたタメのあるリズム・セクションの表現がじつにかっこいい。リンゴのドラムズとポールのベースがぐんと前に張り出してきて、顕微鏡で細部を覗き込むような高解像度サウンドが楽しめた。ジョンのヴォーカルもまさに目の前で歌っているかのようなナマナマしさ。夢中になって聴き続けた。

 高音質デジタルファイル対応USB入力を備えたD/Aコンバーター付きプリアンプとあらゆるスピーカーを軽々と駆動する実力派パワーアンプの組合せで44万円(税抜き)。どんどん低価格化が進むAV機器とインフレ率著しいピュアオーディオ機器。そのアンバランスに違和感を持つ方は多いと思うが、この音、この完成度でこの値段は、けっして高くないと思う。いいスピーカーでいい音楽をじっくり聴きたいとお考えの方にぜひお勧めしたいセパレートアンプの登場だ。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.