シャープとI3(アイキューブド)研究所は9月29日、“次世代のテレビ”をうたう「ICC 4K 液晶テレビ」を共同開発すると発表した。フルHDの4倍の解像度を持つ4K×2KパネルにI3研究所の信号処理技術「ICC」を組み合わせ、質感や立体感に優れた新しい映像表現を追求するという。早ければ2012年度の年央にも製品が登場する見通し。
説明会であいさつに立ったシャープ執行役員AVシステム開発本部長の寺川雅嗣氏は、「アナログ停波後のテレビ市場は停滞気味。3Dテレビやスマート化など、さまざまな試みで活性化しようとしているが、今回は一度テレビの本質に戻り、改めて臨場感や実物感を追求しようという試み」と説明する。
ICC 4K 液晶テレビは、60インチ以上の画面サイズを想定している。すでに60インチ以上の製品も珍しくはないが、画面が大きくなると視野に占める割合が増え、「画面から2〜3メートルという通常の視聴距離で“臨場感”が生まれることが分かった」という。一方、映像がきめ細かい(精細)になると人は“実物感”を感じるが、60インチクラスになると1980×1080ピクセルのフルHDを表示しても解像度は不足するという。「60インチ超で精細度を感じるには、4K×2K(3840×2160ピクセル)が必要だ」(寺川氏)。
しかし、4K×2Kの解像度を持つコンテンツはまだほとんど存在しない、このためI3研究所のICC(Integrated Gongnitie Creation)を採用し、現在のフルHDコンテンツをアップコンバート。「光クリエーション技術」をうたうICCによって映像の精細感を増すとともに、奥行きや立体感が与えられ、物体の存在感すら感じる映像になる(→解説記事)。「テレビのさらなる進化を促すためには新しい価値が必要だ。新しい映像表現ができる製品を作り上げてこそ、新しい液晶テレビといえる」(寺川氏)。
i3研究所の近藤哲二郎社長は、実際の処理について多くを語らなかったが、従来のアップコンバート技術とICCではアプローチが違うと指摘する。既存の技術は、4KパネルにフルHDをアップコンバートして映し出す際、4Kカメラで撮影した映像を予測し、それに近づけるのがゴール。「では、4Kカメラで撮影した映像信号を4Kテレビに映し出せば、自然の画と同じになるかといえば、そうではない」(近藤氏)。
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