“光クリエーション技術”というように、ICCは光とそれを受け取る人間の視覚認知過程に着目した。「カメラで撮影するのは、光の世界を電気信号に置き換えること。では、それをいかに戻すのか。物体に反射した光を目でとらえるときの刺激を再現すればいい」。ICCは、そのためのルックアップテーブル(データベース)を持ち、映像を置換する。その結果、ディスプレイの映像でも自然と同じような見方ができるという。
例えば人間が景色を見るとき、そこにある木や山に反射した光が網膜に刺激を与える。さらに脳の命令によって目は対象物を追いかけ(Look)、ピントを合わせる(Watch)。さらに脳内で対象物同士の関係性を合成し、それぞれの位置関係などを含めた認識(See)が可能になるという。
ICCで処理した映像では、これと同じことができる。桜の木に目を向ければ(Look)、しっかりとピントが合い、舞い散る花びらの1枚1枚まで見える(Watch)、並木の位置関係が自然に認識できて奥行きを感じる(See)。「ディスプレイが60インチクラスまで大きくなり、対象物を目で追うこと(Look)が可能になった。楽に認知できるということは、脳の負担も少ないということだ」(近藤氏)。
シャープとI3(アイキューブド)研究所は、映像信号処理による高画質化だけでなく、パネルやパネル制御技術を組合せた高画質テレビを作り出すために共同開発を進める。ICCはすでにLSI化されているが、単にテレビに組み込んだだけでは良い結果を得られないと寺川氏。「こうあってほしいという信号を入れても、思った光が出てこなかった。逆にパネルが進化したとき、その力を引き出すため信号処理にフィードバックしなければならない。両社の技術を統合したものを作り、商品にしていく」(同氏)。
シャープでは、「ICC 4K 液晶テレビ」の試作機を10月4日に幕張メッセで開幕する「CEATEC JAPAN 2011」の同社ブースに参考出品する予定だ。
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