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洗練された3Dプロジェクター、注目モデルを一気レビュー麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(1/6 ページ)

» 2011年11月24日 18時02分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 最近は4Kに話題を奪われた感もある“3D”だが、製品の市場投入から2年目を迎え、着実に洗練度を上げている。中でもAV評論家・麻倉怜士氏が注目しているのが、3D対応のフロントプロジェクターだ。視野を埋めるような大きな画面で見る3D映画は、テレビとは全く違う迫力がある。今回は、この秋に登場する各社の3D対応プロジェクターについて、麻倉氏のインプレッションを交えながら紹介してもらおう。

――2年目を迎えた3Dですが、やはり昨年と違いますか?

麻倉氏:今年の3D対応製品は、明らかに質が向上しています。1年目(昨年)は、どうしても他社との競争や発売時期などタイミングが重要になり、メーカーにも焦りが出た感じでした。しかし2年目になると、前年の反省をもとに改善された製品を出すことができます。これはどのような製品でも同じこと。事実、3D対応プロジェクターなどは、昨年の「どうかな?」と感じていたレベルに比べると飛躍的に画質が良くなっています。

ソニーの4Kプロジェクター「VPL-VW1000ES」と麻倉怜士氏。10月に開催された「CEATEC JAPAN 2011」会場で撮影

 3Dのように映画の視聴を前提に考えると、やはりテレビでは限界があります。映画館の音響やスクリーンのように暗黒の、特別な環境で見てこそ3Dはうれしいものです。テレビのように日常品では画面も小さく、またサラウンドシステムを持っている人も少ないでしょう。3Dとはまさに没入するコンテンツ。でもテレビは映像に没頭できる環境ではありません。だからテレビでの3D再生は難しい側面がありますね。

 昨年は、メーカーもテレビのメインフューチャーとして3Dをプッシュしていましたが、今年は一定のサイズを超えると3Dやネット関連の機能が付いてくるのは当たり前になりました。機能は普通に入っていて、使わない人も少なくない。使う人も実際に利用する時間は限られている状況です。昔でいえば文字多重放送ですとか、最近ならデータ放送のように“あって当然”の常識的な機能になりつつあります。

 一方のプロジェクターは、利用時に部屋を暗くしますし、大きなスクリーンで映画を視聴します。サラウンド音響を整えている人も多く、まさに3Dに適した製品といえるでしょう。

 昨年の製品には、3つほど欠点がありました。まず液晶シャッター方式のメガネを使用する場合、輝度が落ちてしまいます。画面が暗くなると明るさを確保するために液晶シャッターが開く時間を長くしますが、するとクロストークが目立ちます。また照明器具との関係でちらつき(フリッカー)を感じることもあります。

 3Dの画質でいえば、昨年はJVCケンウッド「DLA-X9/X7」の一人勝ち状態でした。ほかのメーカーに比べると明るく、クロストークの少ない3D映像を実現していました。

2011年12月に発売されたJVCケンウッドの「DLA-X7」と専用メガネ。

 例えば、SXRDを使用したソニーや三菱電機の製品は線順次描き替えだったため(=1つの画面を描画するのに時間がかかる)、クロストークを排除しにくかったのです。一方のビクターは、プラズマテレビのように1つの画面を一気に描画(面書き替え表示)できたので、120Hz駆動ながら画面を明るく、しかもクロストークを抑えることができました。

 今年は各社ともひじょうに頑張りましたソニー、ビクター、三菱電機、そしてエプソンも新型の3D対応プロジェクターを投入しています。順に解説していきましょう。

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