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» 2011年12月21日 15時00分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:年に一度の総決算! 2011年「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編) (2/4)

[芹澤隆徳,ITmedia]

第5位:アキュフェーズ「DP-900」「DC-901」

麻倉氏:アキュフェーズSA-CDトランスポートとDACが5位にランクインです。デジタルトップ10でアキュフェーズが入るのは初め。価格はどちらも115万5000円と非常に高価ですが、ここまでの音を聞かせてくれるSACDプレーヤーがあったのかと大いに感心させてくれた製品です。

アキュフェーズのSACD/CDトランスポート「DP-900」(左)とプレシジョンMDSDデジタルプロセッサー「DC-901」(右)。どちらも重厚な本木目仕上げのウッドケースに収納されている

 今、オーディオ市場では“PCオーディオ”で音源のファイル化が進んでいますが、パッケージが持つエモーショナルな感覚――つまりCDを手にして、パッケージを読み、音楽を聴くというトータルな楽しみ方もまだまだあると思います。その意味で、このSACDプレーヤーは今の時代だからこそ、価値のある製品といえるでしょう。

 「DC-901」は、独自の加算によるノイズ低減のMDS変換方式D/Aコンバーターを進化させ、さらにアキュフェースならではの高品位な音を加えています。芳醇な芸術性とエンターテインメント性を獲得し、すさまじい音楽表現を得ることができました。「レコード芸術」誌(音楽之友社)1月号で書いたコメントを再録しましょう。

音楽之友社「レコード芸術」誌2012年1月号(12月20日発売)より

 まず軽くウォーミングアップのつもりで掛けたCD、ロッシーニの弦楽ソナタ(ベルリン弦楽合奏団。カメラータ・トウキョウ)で早くも、余りの多彩な表現力に驚いた。ひじょうに密度が高く、音色がさわやかで、熱い。内声部のビオラの別旋律が明確に聴こえ、まるてスコアが目視できるかのような高解像度なのだが、同時に楽器の響きも美しい。そこから複数の倍音が同時に発せられ、重層的に音を彩る様子が、実に眼前のドキュメントとしてに聴けるのは音楽鑑賞の最大の幸せといえよう。音場の透明度もひじょうに高い。

 この曲を聴くだけで、これまでのアキュフェーズのCDプレーヤーの音の延長とは明らかに異なる質感であることが分かる。ひとことでいって「深い」のである。私の理解では従来は解像度とコントラストが高く明瞭で快活、そして緻密という音調であったが、DP-900+DC-901は音楽の本質をひじょうに深い部分まで掘り下げ、峻厳という形容ができるほどの描写を聴かせる。


麻倉氏:ネットワークオーディオプレーヤーでは、この音は出せません。パッケージメディアの再生には固有の魅力があります。これからのパッケージのあり方を示すという点で高く評価できる製品だと思います。

第4位:日本コロムビア 音匠仕様シングルレイヤーSACD

麻倉氏:日本コロムビアが、この秋から高音質のSACDシリーズを出しています。自社で音源を持っているアナログ録音の名盤をSACD化していくというもので、ユニバーサルが2010年に始めたシングルレイヤーSACDと同じアプローチといえます。

日本コロムビアが発売したSACDシリーズ

 具体的には、高音質CDで評価されたSHM基材(レーザー光反射で迷光発生が抑制される)を使い、やはり迷光対策としてソニーが開発した緑色コーティングを採用(音匠仕様)。さらにレーザー光が正しく反射する単層(シングルレイヤー)とすることで音質を向上させています。ただし、ユニバーサルはリマスタリングしていないのに対し、コロムビアは音をリフレッシュしているところが異なります。ものすごく音が良いのです。

 アナログ盤で評価の高い名盤がCDになると、圧縮された感じが出てくるものですが、SACDになると実にアナログ的な良さが感じられます。なにより音の立ち方が違います。フレッシュでクリアさが加わり、過去の名演奏がより感動的になりました。古い音源を今聴く意味を考えさせてくれるシリーズといえるでしょう。

 例えばランパルのフルート、ラスキーヌのハープ合奏の滝廉太郎の「花」は、音場感も実に鮮明で、テクニックの切れ味、味わいがすばらしい。最近の録音では、田部京子さんが弾いたシューベルトのピアノ五重奏曲「ます」にハイテンションなエネルギー感を感じました。

 実は最近、SACD再生に対応したプレーヤーが増えています。例えばパイオニアのフルユニバーサルプレーヤー「BDP-LX55」、ソニーの低価格BDプレーヤー「BDP-S370」、OPPOの「BDP-95」「BDP-93NXE」、そして今述べたアキュフェーズのプレーヤーなど、素晴らしい製品が目白押しです。ネットオーディオ時代にパッケージ文化を再評価する動きが見え始めました。そうした時代に音源のほうからもSACD化を進める動きが出てきたことがすばらしいと思います。

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