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年に一度の総決算! 2011年「麻倉怜士のデジタルトップ10」(後編)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/4 ページ)

» 2011年12月21日 15時00分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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 今年最後の「デジタル閻魔帳」は、麻倉怜士氏が1年間を振り返り、とくに印象に残ったものをランキング形式で紹介する恒例「デジタルトップ10」。前編に続き、後編は第7位からカウントダウン!

麻倉怜士氏とお気に入りのデジカメ

第7位:Blu-ray Disc「山猫」

Blu-ray Disc「山猫」(販売元:紀伊國屋書店)価格は7560円

――前回の続きです。第7位は、これもレストア版BD-ROMですね

麻倉氏:1963年公開の「山猫」です。デジタル時代の先進的な修復技術によって、オリジナルフィルムが持つ質感や存在感が明らかになったという点は、前回紹介した「WEST SIDE STORY: 50TH ANNIVERSARY EDITION」(ウエスト・サイド物語)と同じですが、オリジナルフィルムにはなんとここまで情報量があったのかと驚かされました。6月末に発売されたタイトルですが、すでに業界では画質評価のリファレンスになりつつあります。

 山猫は、ルキーノ・ヴィスコンティ監督がバート・ランカスターやアラン・ドロンを起用して製作した山猫伯爵の没落物語。イタリアの分権国家が終焉(しゅうえん)を迎え、シシリア島の実力者も市民勢力に取って代わられる時代が舞台になっています。撮影では実際に貴族の屋敷でロケを行い、エキストラとして貴族の末裔(まつえい)たちが登場します。つまり、映像のディティールが“本物”。それをAGFAのフィルムで撮影した映像は、最近のビデオやフィルムとは全く違う、圧倒的な、映画的な情報量を持っていました。

 中でもチャプター15の30分間にわたる舞踏会のシーンは、本当に絵画的な美の饗宴です。それも、こってりとした油絵的な泰西名画的な映像美。ディスプレイをイーゼルに置けば、それ自体が名画として通用しそうなほど素晴らしい映像です。

 オリジナルのフィルムは保管状態が悪かったそうですが、スコセッシ財団が1万時間以上を費やしてフィルムを修復しました。それを8K解像度でスキャンし、4K編集、2K(フルHD)デリバリーという流れです。以前、BDで放送されたリマスター版と比べても映像が全く違います。元のフィルムがあれば、古い作品でも新しいエンターテインメントになり得るという、AVのハイレゾ化を象徴するタイトルだと思います。

第6位:フォステクス「G1302MG」

フロア型の「G1302MG」(左)とブックシェルフ型の「G1300MG」(右)

麻倉氏:第6位は、11月の「おまけコーナー」でとりあげたフォステクスのスピーカー「G1302MG」です。

 国産ハイエンドオーディオが衰退する中、海外メーカーの製品と真っ向から張り合える製品が登場しました。フォステクスは、フォスター電機の中にあってスピーカー部品単体ではなく、完成品としての“音を売る”社内ユニットです。マグネシウムの優れた特性に着目し、最初は小型スピーカーにマグネシウム合金振動板を採用しました。

 今回は合金でなく純マグネシウムで、しかも13センチ径のウーファーまでマグネシウムで作り上げたところが大きなイノベーションです。しかも新しい素材を使いながら、それを全く意識させない音楽的な完成度の高さを獲得しています。国内メーカーが技術的な裏付けを持って送り出した自信作といえるでしょう。

 マグネシウムは、音離れが良く、音の空間がとてもクリア。CDを聞いても“ここまでの情報が入っていたのか”と思うほどの音を聴くことができます。ただ、G1300Mではやや低域の量感が不足していたので、今後の期待も込めて6位としました。フロア型の「G1302MG」については、現在ペーパー振動板を使用している部分もマグネシウムにすることが次は目標になります。

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