もうひとつの製品、CDプレーヤー「vivid」は、オリジナル指向にこだわりつつも、どちらかというと「vita」とのデザインマッチングを重要視した印象が伺える。電源スイッチやディスプレイなどは、「vita」と配置もデザインも一緒。角が丸められたCDトレイは、位置こそ過去のモデル「CD-50」とほぼ同じながら、ずいぶんと印象が異なっている。やはり「vivid」の上に置くのがベストといえる。2台を上下に並べて置くと、初めからこの2台は繋がっているんじゃないか、と思うくらいにスマートで収まりのよいたたずまいとなるからだ。姿を見ただけで思わず「セットでください」といいたくなってしまう、ある意味!?で危険な組み合わせだ。
その内部も、「vita」のような徹底したオリジナル指向ではなく、クォリティに重きを置いたキャラクターとなっている。例えばドライブまわりには、サンヨー製ドライブメカや東芝製コントロールチップ、DAコンバーター「CS4398」(シーラス・ロジック)など、上級モデル「neo」と同じパーツを使用。また電源部とCDメカを余裕ある配置にレイアウトすることで信号劣化を排除するなど、細部にまで行き届いたこだわりが反映されている。
いっぽうで、DIR(digital input receiver)に「CS8416」(シーラス・ロジック)を採用し、さらに同軸×2/光デジタル×1入力を用意することで、最高192kHz/24ビット対応のDACとしても活用できるようにもなっている。また今後は、DDC「D-SPRINT」やiPodデジタル接続ドックなどもオプション発売予定となっているので、機能性についてはさらなる拡がりが期待できる。
さて、そろそろ肝心のサウンドをチェックしよう。まずはプリメインアンプ「vita」にUSBケーブルでPCを接続した。
最初の音が出てきた瞬間、はっと驚いた。聴き慣れたはずのTADスピーカー(TD-4001ドライバーとTL-1601bウーファーの2ウェイ)から、初めて耳にする音が流れてきたのだ。ヴォーカルのフォーカス感が異様に高く、いつもより1歩も2歩も前に出て歌っているかのような存在感の強さを感じる。音色も自然で、やたらとリアルだ。いっぽうでバックの演奏は、うって変わって存在感よりもバランスを重視した、ジェントルな響き。聴き馴染みのよい、自然さを持ち合わせているのだ。メイン楽器やヴォーカルは力強く、それでいてホールの反響は柔らかく自然。あまり体験のない、特徴的なサウンドといえる。
しばらく聴いているうちに、だんだん思い出してきた。確かに以前所有していた「VA-50」も、ヴォーカルについてはハスキーにもファニーにもならない、録音そのままと感じさせてくれる自然なサウンドだった。ただし、ここまでのダイレクト感はなく、どちらかといえば聴かせどころをわきまえているアンプ、といったイメージ。これに対して「vita」は、より躍動的に聴かせてくれる方向性となった。ヴォーカルは立ち位置が近づき、声も生き生きとしている。アコースティックギターも、カッティングが力強い。
もしかすると、過去の製品に対してSNが桁違いに向上しているのかもしれない(多分その通りだと思うが、比較試聴していないので断定はできない)。シングルプッシュブルならではのヌケの良さ、ストレートな音楽表現の潔さをより強く感じられるようになったのだ。ここまで行くと、いい意味で別物。いや、数段アップグレードしたというべきか。この音がほぼ過去の製品とほぼ同じ金額で手に入るなんて、何とコストパフォーマンスがよいのだろう。なかなかに魅力的だ。
次に、入力をPCから「vivid」に変えて試聴を継続。ちなみに「vivid」とは、一般的なRCA(アンバランス)ケーブルで接続することにした。
さすが高級CD専用プレーヤー(ピュアオーディオの世界ではミドルクラスに当たる価格帯だが一般的には十分高級機といえるだろう)、とりあえずのアンバランス接続にもかかわらず、PC接続に対してかなりアップグレードしたサウンドを聴かせてくれる。解像度の高さ、階調表現の細やかさ、ダイナミックレンジの幅広さなど、全てにおいて数段上。たまたま遊びに来ていた、オーディオ製品に疎い友人ですら「何が違うのか上手くいえないけど断然こっちがいい」と言い切ったくらいだから、その差は誰でも分かるほどに顕著だ。さらに素晴らしいのが、音の力強さだ。ダイナミックレンジが幅広く、細やかなニュアンス表現もしっかり拾い上げてくれるにもかかわらず、元気でヌケの良い、ダイナミックなサウンド表現を得意としているのだ。デザインだけでなく、音も「vita」とのマッチングは最高といえる。
このように、オーラデザインの「vivid」「vita」は、そのスタイリッシュな外観とともに、サウンド表現としてもかなり魅力のある、キャラクターの際だった製品だといえる。とくに過去のオーラ製アンプの音を知っている人間は、その進化のほどに大いに驚くことになるだろう。もしかすると、このスタイリッシュなオーディオシステムのオーナーに、返り咲きたくなってしまうかもしれない。かくゆう筆者も、いままさに誘惑との戦いの最中だ。
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