前回に引き続き、10月中旬に開催された「オーディオ&ホームシアター展 2013」を中心に、最新のオーディオ動向を解説していただいた。今回はBDオーディオやハイエンドオーディオの最新トピック、そして麻倉氏が個人的に気になった新製品をピックアップ。
――前回は、ハイレゾ音源配信の拡大とソニーの新製品に関する話を伺いました
麻倉氏: ハイレゾ音源配信の拡大はうれしいことですし、ソニーのHDDプレーヤーはよく考えられた製品です。ただ、私がソニーに指摘したのは、「あまりにもディスクを排除していないか?」ということ。いくら簡単にしたと言っても、HDDプレーヤーはPCで音源をダウンロードすることが前提です。誰でもハイレゾ音源を楽しめるようにするには、ハイレゾ収録のディスクと、それを簡単に再生できるプレーヤーも必要ではないでしょうか。それがBDオーディオです。
今年の「オーディオ&ホームシアター展」のトピックとして、ユニバーサル・ミュージックが本格的にBDオーディオを手がける方針を発表したことが挙げられます。「ブルーレイはオーディオ市場を拡大できるか?」というテーマでパネルディスカッションが行われたのですが、その中でユニバーサル合同会社の島田さんが明らかにしました。
同社の場合はブランドから独自です。「HIGH FIDELITY PURE AUDIO」というブランドを掲げ、昨年からBDオーディオを展開していますが、2013年の年末までに世界14ヵ国、タイトル数は150まで増やす方針といいます。国内ではハピネットが販売を担当し、10月からクラシックやジャズなどのタイトルを順次投入しています。
――欧州ではBDオーディオが売れているそうですね
麻倉氏: フランスなどで大ヒットしています。他社を見ても、ワーナー・ミュージックのレッド・ツェッペリン、ソニー・ミュージックのデヴィッド・ボウイなど、注目タイトルは多い。日本では今まで、2Lの輸入版やカメラータ・トウキョウのクラシックタイトルなどが主でしたが、欧州のようにメジャーコンテンツで始めると、かなりの人気が出るのです。
一方でハードウェア、つまりBDプレーヤーも必要です。パネルディスカッションの席でも指摘しましたが、最近はどこのイベントに行っても米OPPO Digitalのユニバーサルプレーヤーが置かれています。確かにOPPOのプレーヤーは素晴らしい製品ですが、国内メーカーの製品が見られないのは悲しいことです。
――日本ですと、やはりBDはレコーダーという雰囲気です
麻倉氏: 確かにBDレコーダーにもプレーヤー機能はありますし、パナソニックの「DMR-BZT9600のように“音”に注力した製品も存在します。しかし、単体プレーヤーは別の存在として大事でしょう。私には、国内メーカーは“大事な部分”をみすみす海外メーカーに渡してしまっているように思えます。
事情は想像できます。BDレコーダーはビジュアル機器の範疇(はんちゅう)で、オーディオの事業部が手がけることは難しいでしょう。しかし、それなら2つの事業部で一緒に作るべきではないでしょうか? パネルディスカッションの会場でそう話したところ、皆さん拍手してくれましたよ。
いずれにしても、BDオーディオも順調に立ち上がっています。ハイレゾ音楽は、さまざまなシチュエーションで楽しめることが理想ですから、メーカーには今まで以上に考えてほしいと思います。
――拍手といえば、スーパーハイビジョン関連のセミナーでもありました
麻倉氏: 「スーパーハイビジョン」(SHV、8K)の音声フォーマットですね。SHVの22.2ch音声は、水平方向から垂直方向までカバーするために計算上、最適なチャンネル数を求めた結果です。しかし、音質はどうでしょう。実は現在と変わりません。
このあたり、業界内では“公然の秘密”のようなもので、皆さん黙っていた部分なのに、私が「当然ハイレゾですよね?」と聞いて露わにしてしまったわけです。NHKの担当者は“空間のハイレゾ”を作るとか、Hybridcastでハイレゾ音源を伝送する手段もあると話していましたが、ベースになるフォーマットは重要ですから、映像と一緒に音も革新されることを願いたいですね。
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