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JVC「DLA-X700R」が描き出す“小津カラー”の鮮やかさ山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)

» 2014年01月22日 17時52分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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 DLA-X700Rに採用されている表示素子は、これまで同様自社開発の反射型液晶のD-ILAで、その解像度は先述の通り1920×1080ピクセルのフルHD。入力信号に応じて高周波成分を抽出し、120分の1秒ごとに元のフルHD信号と斜めに0.5 画素分ずらした高周波信号成分を交互に表示して4K/2K相当の高精細映像を描出するというのがe-shiftだ。

画素シフトによる高解像度化のイメージ(出典:JVC)

 3世代めのe-shift搭載機となるDLA-X700Rは、抽出した高周波成分を制御するマルチプル・ピクセル・コントロール(MPC)に「オート」モードが加わったが、この出来がたいへんすばらしいことが分かった。4Kマスタリング映画BDを観ると、ぼくが自室で使い続けているフルHDタイプの「DLA-X9」と一味異なる目の覚めるようなキレのよい高精細映像が楽しめるのである。加えて「フィルム」「シネマ」モードの色再現のリッチさ、強靱(きょうじん)なコントラスト表現は、ライバルのソニー「VPL-VW500ES」以上の魅力があるといってもいいだろう。e-shiftとMPCの進化、それに加えて光学系レンズ設計の成熟と、継続してきた"枯れた"技術の蓄積がここにきて大きくものをいっているように思う。

HDMI入力は2系統で、4K/60p入力に対応する(左)。MPCを使った細かい画質調整も可能。映像解析結果の表示は周波数帯別に色分けされる(右)

 コントラスト表現、ことに漆黒の見せ方は以前からJVCプロジェクターの得意とするところだが、本機には新たにダイナミックアイリス(レンズアパーチャー)機能が加わった。しかし、わが家の110インチ・スクリーン(キクチ/スチュワートのMALIBU)で試してみたところ、正直この機能は必要なしと思った。ダイナミックアイリスを用いずとも、十分に黒らしい黒が得られるからである。

 また、e-shift3世代めの本機で初めて4K入力が可能となったのも注目ポイント。ただし、本機は原理上、入力された4K信号は一度フルHDにダウンコンバートされ、e-shift処理されて4K表示されるので、リアル4K画素タイプに比べてその利点は少ない、ということになるだろう。

「彼岸花」小津安二郎生誕110年・ニューデジタルリマスターは4035円で販売中。販売元は松竹

 しかし、自室のパナソニックのBlu-ray Discレコーダー「DMR-BZT9600」の4Kアップコンバート出力を投写してみたところ、その魅力を少なからず実感することができた。とくにそのよさが実感できたのが、小津安二郎監督初のカラー映画「彼岸花」(1958年/スタンダード・サイズ)のBD。松竹と東京国立近代美術館フィルムセンターが共同で修復にあたったというニューデジタルマスターの出来がたいへんすばらしく、アグファカラーフィルムを用いて品格の高い様式美を描き出した小津作品の魅力が、「DMR-BZT9600」の4Kアップコンバート出力でいっそう浮き彫りになったと実感できた。

 この映画では、若々しく可憐(かれん)な山本富士子が複雑な色模様の着物に真っ赤な紬の帯を締めて登場するが、DLA-X700Rで観るその鮮やかさといったらない。DMR-BZT9600の4K出力でそのシーンを観ると、色ギレのよさが際立ち、着物の染めの見事さがよりいっそうリアルに感じられるのである。

 ていねいにリマスターされた過去の名画を、高画質BDレコーダーと色鮮やかでコントラストに秀でた高精細プロジェクターを組み合わせて観る楽しさを満喫したひととき。これだからホームシアターはやめられない、との思いを強くした。

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