バルミューダがこれまで“心地良い自然の風”を再現するために採用した、もっとも革新性の高い要素は以下の2点だ。
まずはDCモーターを採用することで、一般的な扇風機の毎分600回転に対し、最弱運転時では毎分250回転という超低回転を実現。省電力かつ無音に近い形で、従来機では実現できなかったより優しい風を吹かせるための基礎体力を身につけた。さらに、二重構造の羽根を使った独自の特許技術「グリーンファンテクノロジー」で目的を達成する。
「グリーンファンテクノロジー」では、独自に開発した内側と外側それぞれに配置した二重構造の羽根で、外側からは速い風を、内側からは遅い風を送り出す。内側の羽根の前方では空気が薄くなり(気圧の低い状態に)、外側の風が内側へと自然と引っ張り込まれる。内側と外側の風が衝突すると扇風機特有の風の渦成分がなくなり、その後は“面”で移動する空気の流れへと生まれ変わるという仕組みだ。これにより、大きく広がりゆっくりと進む、“心地良い自然の風”を再現できる。
とはいえ、この「グリーンファンテクノロジー」は、初代「GreenFan」時点で開発されたものであり、DCモーターを採用することはもちろん、特に羽根の形状にいたっては、「GreenFan Japan」の発売に至るこの4年間、一切変えていない。一般的に家電の世界において4年間、ひとつの肝となるパーツの進化が止まっているというのは非常に珍しいことだが、それについて、寺尾氏ははっきりと語る。
「これまでも羽根の枚数を変えたり、角度や奥行きを変えたり、素材を変えてみたり……と、あらゆるチャレンジをしてきました。それは、われわれも今の『グリーンファンテクノロジー』がベストだとは思っていないからです。例えば風が届く距離がもっと伸びないか? 人が感じる心地良さをさらに高めることができないか? 初代からずっとトライ&エラーを繰り返してきました。でも、今の羽根以上に良い結果を出すことができなかったのです」。
つまり、最初から羽根の形状を変える意志がなかったのではなく、さまざまな検証を行っても、初代から続く羽根がベストだったということだ。「この初代『GreenFan』の二重構造の羽根というのは、“奇跡の羽根”だと思います。ものすごい黄金比というか、バランスが保たれていて、少しでも手を施そうとすると、風の質が悪くなってしまう。例えば、風速が落ちたり、音が大きくなったり、距離が届かなくなったりしてしまいます」という寺尾氏。「メーカーでありながら、こんな表現をすると“技術がない”と勘違いされるかもしれませんが」と笑った。
根幹となる技術は変えない一方、風の質はというと、新しい「GreenFan Japan」でしっかりと変えてきている。“心地良い自然の風”は前モデル「GreenFan2」が10メートルだったのに対し、最大15メートルという距離まで届くように進化させながら、その音は前モデル同様に最小13dBと、「蝶2匹の羽音と同じレベル」までの静音化に成功している。DCモーターや羽根の形状という「GreenFan」シリーズの根幹となるパーツを変えるのではなく、どうやってその風の質を高めたのだろうか?
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