ヘッドフォン・バイヤーズガイドの4回目は実売3万円から5万円の価格帯を取り上げよう。各社の高級モデルが並ぶ中、もっとも評価が高かったのは、あの製品だった。
その前に恒例「野村ケンジのアドバイスコーナー」。前回の開放型に続き、今回は「密閉型」を解説してもらった。
――今回は「密閉型」です。
野村氏: 密閉型、クローズドなどと呼ばれますが、密閉されていないハウジングを持つ製品を指します。
メリットとしては、やはり音漏れが抑えられること。ヘッドフォンを屋外で使用する場合、あるいはレコーディングスタジオでは基本的に密閉型でないとダメです。
音質的には独特のウォーム感のある音になるため、好き嫌いの分かれるところかもしれません。またスピーカーユニット本来の音というより、ハウジングを含めたトータルな音になりますので、作り込みに関してはメーカー各社の特長が出やすい製品といえますね。
――メーカーの腕の見せ所ですね
野村氏: そうです。デメリットは、“良い音”にするにはそれなりのノウハウがいるという点でしょう。
あと注意点として、ハウジング内のエアーを多少抜かないと振動板が動きにくくなるため、エア抜きのダクトを設けている製品も存在します。例えばソニーの「MDR-1R」はエアーダクト付きで、純粋な密閉型ではありません。こうした製品の場合、音が漏れる可能性もあるので、事前に確認しておきましょう。
――次回はいよいよ最終回です。テーマは何にしましょう。
野村氏: ええと、後で考えます。
そんな思慮深い野村氏を含むレビュアーは以下の3人だ。
今回、取り上げる製品は以下の4機種。2012年発売のデノン「AM-D600EM」が少し値下がりしていたが、例によってそのまま掲載する。なお、AKG「K712 PRO」とフィリップス「Fidelio X1」は開放型、B&W「P7」とデノンの「AH-D600EM」は密閉型となっている。
ブランド | 製品名 | 再生周波数帯域 | インピーダンス | 感度 | 販売価格 |
---|---|---|---|---|---|
AKG | K712 PRO | 10〜3万9800Hz | 62オーム | 93dB | 4万824円 |
フィリップス | Fidelio X1 | 10〜4万Hz | 30オーム | 100dB | 4万5223円 |
B&W | P7 | 10〜2万Hz | 22オーム | 111dB | 4万7109円 |
デノン | AH-D600EM | 5〜4万5000Hz | 25オーム | 108dB | 2万9000円 |
AKGブランドのプロフェッショナル向けヘッドフォン。今年2月に「K812」が登場するまではハイエンド商品という位置づけだった。オーストリアのウィーンで熟練した職人が手作業で組み立て、製品には固有のシリアルナンバーが記される。さらに厳格な出荷検査や2年間の長期保証といった点もプロ向けの高級モデルならでは。
製品としてはモニタリング用のオープンエアー型で、振動板は異なる2種類の素材を組み合わせた「TWO-LAYERダイヤフラム」構造。中心部と外縁部で厚みを変える独自の「バリモーション・テクノロジー」、リボン状のワイヤーを使用したフラットワイヤー・ボイスコイルなど多くの独自技術が盛り込まれている。
イヤーパッドは耳全体をすっぽりと覆うアラウンドイヤータイプ。パッドは低反発素材、表面は滑らかなベロア素材を使っていて、取り外して手洗いも可能だ。ヘッドバンドはソフトな本皮製。ケーブルは着脱式で、ストレートケーブルとカールコードの2種類が付属する。
音だけなら確実に5点。販路が楽器店などに限られるのがもったいない。新世代なKシリーズのサウンドは冷静な音で、ドライバーが新しくなった分、クオリティも高い。低反発ウレタンも気持ちよく、音の良さがより装着感で高まる。
ルックス的には近くても、中身は「K701」とはまったくの別物。サウンドバランスが良くて、音の解像感もあり、個人的にすごく好き。iPhoneから直接でも十分よかったけど、ポタアンを通して聴くことで、その良さは際立つ。
装着感、軽さともかなり理想に近い感じ。見た目もオレンジのコードなど派手なのに、音に派手さはないので、打ち込み系はちょっと物足りないかも。低音から高音まで忠実に再現し、音は自然の一言。長く聴いていられる点も高評価。
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