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Dolby Atmos再生にも個性の違い――デノンとパイオニアの試作機をチェック山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(1/2 ページ)

» 2014年08月18日 14時45分 公開
[山本浩司,ITmedia]

 この秋のオーディオビジュアル・シーン最大の話題は、「Dolby Atmos」(ドルビーアトモス)のホームシアター展開、すなわちAVアンプのアトモス信号処理回路の搭載ということになるだろう。

「Dolby Atmos」のロゴマーク

 そもそもドルビーアトモスというのは、2012年に米国のドルビー研究所が提案した劇場用音声フォーマット。従来の5.1ch、7.1chといったチャンネルベースの音声に、天井に取り付けるトップシーリングスピーカーを加えて最大64チャンネルのスピーカーアロケーションが可能な最新の立体音響技術だ。

 このフォーマットで注目したいのが、音像の絶対座標化の実現とそのフレキシビリティー。音素材1つ1つを「オーディオオブジェクト」と捉え、その位置・時間情報をメタデータとして記録して劇場に配給、そのデータを基に上映される劇場のスピーカー数と配置に応じたレンダリング(演算処理)がドルビーアトモス専用プロセッサー「CP850」にて行われる。それによってサウンドデザイナーが意図した音響効果が、それぞれの劇場のスピーカー構成に合わせて最適化されるという仕組みだ。

Dolby Atmosのレンダリングには従来以上のパワーが必要。デノン「AVR-X4100W」はDSPの「SHARC」を4基を搭載(写真)。パイオニアもDSPを増強している

 昨年以降、イオンシネマ、TOHOシネマズを中心にわが国でもドルビーアトモス上映館が少しずつ増えている。筆者は昨年暮れに「イオンシネマ幕張新都心」の「スクリーン8」で「ゼロ・グラビティ」をドルビーアトモス体験し、音像の1つ1つを指で示すことができるくらいのリアルな移動感とトップシーリングスピーカーを活かした半円球状に広がるそのダイナミックな音場表現にはげしく心を揺り動かされた。そして、ドルビーアトモスこそ1990年代半ばに果たされた「サウンドトラックのデジタル化」に次ぐ“映画音響の大革命”だということをすぐさま認識したのだった。

 このドルビーアトモスのリアル3次元立体音響がいつになったら家庭で楽しめるようになるのだろうか、それはきっとしばらく先のことだろうと予想していたのだが、1年も経たずにAVアンプにアトモス信号処理回路が搭載されることになり、その展開の速さに驚いているというのが正直なところだ。

 ちなみに「イオンシネマ幕張新都心」の「スクリーン8」は、スクリーン裏のL/C/RスピーカーにJBLプロフェッショナルの4Way機「5742」を設置した、とても音のよい映画館。劇場内はきわめて静粛で、空調ノイズもまったく気にならない。首都圏近郊にお住まいで最新映画音響に興味のある方は、ぜひ一度お出かけになることをお勧めする。

 家庭用ドルビーアトモス・フォーマットの詳細は未だ明らかにされていないが(8月中に発表予定)、現時点で把握できていることを簡潔に述べておこう。

 ドルビーアトモスのメタデータ(3次元の位置・時間情報)は、Blu-ray DiscのドルビーTrue HD音声に重畳して収録され、HDMIインタフェースを用いて、ビットストリームでBDプレイヤー/レコーダーから対応AVアンプに伝送される。AVアンプ内のアトモス信号処理回路でメタデータを解読、スピーカー構成に応じたレンダリング処理が行われる仕組みだ。

 オーバーヘッドスピーカーは、リスニングポイントの頭上(天井)のトップフロント/トップミドル/トップリアにステレオペアで1組ないし2組を下向き設置することが推奨されるが、フロントスピーカー上方の壁に取り付けるフロントハイト、視聴位置後方の壁に取り付けるリアハイトの運用も認められている。

オーバーヘッドスピーカーは1対もしくは2対(写真はパイオニアの視聴室、天井スピーカーの効果を検証するため、3対の可動式スピーカーを設けた)

 天井に新しくスピーカーを取り付けろといわれても、そんなの無理……とおっしゃる方は多いと思うが、とりあえずフロントハイト、リアハイトでもオッケーということであれば、ドルビーアトモス挑戦のハードルが低くなることは間違いないだろう。

 また、ドルビーアトモスが収録されていない通常の5.1ch/7.1ch音声(ドルビーデジタルやDTS 、放送用のAAC音声など)についても、アトモス回路を積んだAVアンプではオーバーヘッドスピーカーを活かした信号処理が可能になり、その再生モードの呼称は「ドルビーサラウンド」になるという。

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