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テクニクス復活と「SmartWear」、IFAのトピックから見えてきたソニーとパナソニックの変化IFA 2014(3/4 ページ)

» 2014年09月05日 12時41分 公開
[本田雅一,ITmedia]

”質の高い体験”を重視した戦略軸に変更なし

 詳細はスマートフォン新機種にフォーカスを当てた記事を見ていただきたいが、ベストオブソニーをXperia Zシリーズに集めるというソニーの戦略は、今回のIFAも変わらない。「目新しさがない」と言う人もいるだろうが、むしろ“方向が定まり、進む方向も落ち着いてきた”と言えるのではないだろうか。

ソニーの平井一夫社長兼CEO

 先日の決算発表ではフラッグシップモデルの発売サイクル見直しや、発売地域の絞り込みなどに言及されていたが、ここドイツをはじめ欧州先進国でのXperiaは存在感をここ1年でさらに高めた印象だ。それは街中の携帯電話ショップを見ても分かる。新製品投入タイミングなどの関係もあるだろうが、ベルリンのVodafoneショップでは、売上げトップ10にXperiaが5台もランクインしていた。

 もちろん、スマートフォンのビジネスは通信キャリアとの協業でもあるため、ベルリンのVodafoneショップだけですべてを判断はできないが、販路が確保している地域に限れば、安定して良い品質、機能のスマートフォンを提供できるメーカーとして認知が進んできているとはいえる。

 質の高い体験を軸とした商品開発を進めてきた平井一夫CEO兼社長の考えは今も変化していない。今回のIFAでも中心となる製品はXperia Zシリーズだが、今年は新たな旗艦モデルとなる「Xperia Z3」だけでなく、同時に性能、機能をほとんど切り捨てずコンパクト化した「Xperia Z3 Compact」、厚さ6.4ミリ、重さ270グラムの8インチ・ミニタブレットの「Xperia Z3 Tablet Compact」を同時投入し、この分野へのコミットメントを示した。なお、平井氏への取材リポートは別途お伝えする予定だ。

「Xperia Z3 Compact」の発表

 発表会ではXperiaシリーズのほか、レンズスタイルカメラの「QX」シリーズも拡充。Eマウントレンズを装着可能な、APS-Cセンサー採用のレンズスタイルカメラという、なんともマニアックに深掘りされた製品も登場している。昨年のIFAでアナウンスされたハイレゾオーディオ製品も、”ハイレゾ対応”をうたう新製品を7種類投入。この中には世界最軽量のハイレゾ音源再生機器(ウォークマン)もある。子会社となったテレビ事業でも、大画面カテゴリーでは人気が高まりつつある曲面パネル採用の4Kブラビアを並べた。

ソニーブース

曲面パネル採用のブラビア

 すなわち、好奇心を刺激するためにも、高い商品力を持つ、驚きと感動を与えるための製品作りというコンセプトにはまったくブレがない。では何も変わっていないのかと言えば、商品開発のエネルギーが”驚かす”ことよりも、体験の質を高める”熟成”に向かっているという印象だ。

 例えば、「Xperia Z3」はナローベゼルやさらなる薄型化などのトピックもあるが、もっとも大きな変化は、まるまる2日はもつというバッテリー持続時間だ。2日間は充分もつという計測基準はソニー内部の測定ルールに基づくものだが、「Xperia Z1」をこの基準で計測すると1.2日程度とのこと。大幅に伸びたことは間違いない。カメラに関しても、スペック面での大きな違いよりも、実際の描写性能や25mm広角といった部分、それに実効ISO感度の強化などが行われた。粛々と各機能の質を高めていく方向で開発が進められたことを感じる。

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