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フィリップスが回転式シェーバーに詰め込んだスゴイ技術――IFAで本国担当者に直撃滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/3 ページ)

» 2014年09月18日 20時45分 公開
[滝田勝紀,ITmedia]
9000シリーズ

 「9000」シリーズの開発にあたり、日本はリードカントリーの1つとして深く関わってきた。およそ3万6000人もの意見を吸い上げ、“肌に対する優しさ”や“そり残しの少なさ”、そして“深ぞり性能”を追求している。このため、「日本人にとっても最適なシェーバー」に仕上がっているという。

 「そもそも肌は個人や年齢による差が大きいですが、ヒゲの生え方は人種によって傾向が異なり、断面の形状が違います。例えば、白人のヒゲの断面は円形に近く、アジア人は楕円(だえん)に近い。フィリップスは欧米が本拠地のメーカーですが、この9000シリーズは日本チームにも開発当初から協力して作られたので、欧米はもちろん、アジア人たちのヒゲもきっちり捕捉できるにようローカライズされています。そのためにさまざまな技術を今回も投入しました」。

 まずは肌に密着するヘッドの素材から見直した。それは、回転式シェーバーにとっての生命線である“肌に対する優しさ”をさらに高めるためだ。

 「ヒゲそりというのは、最初の1ストロークでより多くのヒゲをとらえてカッティングしてしまえば、何度もこする必要はありません。性能が低いシェーバーは、結局何度も動かさないとしっかりとそれないので、結果肌へ負担が増えてしまいます。この9000シリーズは、より少ないストロークですべてのヒゲをカットできるのはもちろん、同じ1ストロークでも、より肌への負担を減らすため、ヘッドのリング部分表面に特殊なガラス素材を混ぜた塗料でコーティングしています。肌への摩擦を減らし、圧力もかかりにくい」。

 また、1ストロークでカットするヒゲを増やすために開発されたのが「ダブルV字トラック刃」だ。「ヘッドのヒゲが入り込む部分(外刃)は、通常直線のものがほとんどですが、9000シリーズはハサミのようなV字型を採用しました。ヒゲが自然と中央に入り込んでくることで、より多くのヒゲを逃さずカットできます。さらに内側で迎え撃つ刃(内刃)にも同じV字形状を採用しています。VとVがそれぞれ正面で向かい合うような形で動かすことで、しっかりとカッティングができます。これはわれわれの独自の技術であり、このレベルの金属加工技術は他社では実現できないと自負しています」。

「ダブルV字トラック刃」の説明用模型

 さらに、もっとも重要な点として、“そり残し”を減らす技術が入っているというホン氏。それが新技術の「輪郭検知テクノロジー」だ。検知といってもセンサーなどが入っているわけではない。ヘッドが可動する方向を増やし、ひげそり時に自然に肌への密着度が向上するというものだ。

 「9000シリーズのヘッドは、同時に8つの方向に可動します。まずシェービングユニット自体が2軸(前後、左右)に可動します。さらに3つのヘッドが独立して動くので、これで5軸。ここまでは従来機でも実現しています。そして新たに各ヘッドの外刃が可動するようになり、合計で8軸の可動が可能になりました。あごの形や顔の表面は、人によってまったく異なりますが、このヘッドならどのような状況でも対処できます」。

ヘッドに8軸の可動域を設けたことにより、輪郭に追従する

 「とくに3つあるヘッドの動きを先代に比べて大きくしたことが大きいと思います。頬からあごにスライドしていくに従い、ヘッドは大きく角度を変えるものの、あまり圧をかけなくても面への移行が包み込むように行えるようになりました。往復式シェーバーでは、構造上、このあごと頬の境界部分などは肌と接する部分が少なくなり、すき間もできてしまいますが、この9000シリーズは、わざわざ持ち替えなくても、そのままシェーバーを動かすだけでスムーズに頬からあご、さらに喉まで、隙間を作ることなく移動できるのです」。

筆者シェービング中

 さらに細かな技術の話が続く。外刃の内側のトラックにも実は工夫があった。

 「ヒゲは毎日そる人もいれば、少し伸びてからそるという人もいて、シェービングスタイルは人それぞれです。とくに少し伸びてからそる人の場合、まっすぐ伸びる人なら比較的容易ですが、肌に寝てしまうヒゲの人も少なからずいます。そういった人のヒゲもしっかり捕らえるよう、刃の内側のトラックに工夫を施しました。シェーバーを動かすだけで、内側のトラックが毛を立たせ、しっかりとV字の凹みまでヒゲを導入します。ユーザーは自分のヒゲの生え方などを意識することなく、効率的にヒゲがそれるようになっています」。

 こういった細かな工夫により、先代モデルと比較して、1ストロークでそれるヒゲの数は20%アップしたという。また、このシステムにより、従来機より刃の枚数を3枚多い24枚へと増やせたことも、1ストロークの効率アップにつながっているのだろう。

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