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ハイレゾ・ポータブルプレーヤーの頂点に立つ! Astell&Kern「AK380」を聴く(3/4 ページ)

» 2015年05月26日 19時52分 公開
[山本敦ITmedia]

AK380のサウンドをバランス&アンバランス接続で聴いてみた

 それでは早速「AK380」を試聴したインプレッションを報告したい。今回は本機のアンバランス、バランス出力の音を比較するために、Astell&Kernとbeyerdynamicのコラボレーションによるヘッドフォン「AK T5p」を組み合わせた。beyerdynamicの密閉型ヘッドフォン「T5p」をベースにAKシリーズに音質を最適化したカスタマイズド・モデルだ。2.5ミリの4極バランス端子を標準装備としているが、3.5ミリミニジャックへの変換アダプターも付属している。アンバランス接続のサウンドは、筆者が普段リファレンスに使っているオーディオテクニカの「ATH-MSR7」でも確認した。

「AK T5p」でアンバランス接続のサウンドから試聴を開始

 まずはアンバランス接続で試聴する。オーケストラは空間表現力が圧倒的に高い。弦楽器のハーモニーは絹のように滑らかで、高域の艶やかさも絶品。柔らかい音に包み込まれる。S/Nの良さが際立ち、ノイズフロアも極めて低い。透明で冷たい空気の中に、柔らかく自然な暖かみのあふれる音楽が満ちていくような感覚。究極のデジタルサウンドでありながら、有機的な暖かみもあふれるような体験だ。

 ロックはマイケル・ジャクソンの「XSCAPE」から『Love Never Felt So Good』を試聴。アタックの打ち込みが正確で、ためらいがなく明快。中低域の足腰がどっしりと安定していて、バネも鋭い。フットワークはとても軽やかだ。ボーカルはセンターの位置にくっきりと浮かび上がる。声質の再現がとてもナチュラルで、ハイトーンの余韻は切れ味もさわやか。階調感はきめ細かく、色合いも鮮やかに出してくる。パーカッションはカラッとした気持ちの良い乾いた音色。余計な色づけのない、小気味いリズムセクションが演奏の安定感をしっかりと支える。ピアノのアタックは力強くストレートだが、指先のタッチを柔らかく蘇らせる暖かみも備えている。

小沼ようすけのアルバム「GNJ」

 続いてジャズギタリスト、小沼ようすけのアルバム「GNJ」から『Jungle』を聴いた。ニュートラルでむやみな色づけのない、リアルなサウンドだ。ギターの音色に一切の濁りやひずみがない。生楽器の音の魅力はとてもストレート、かつ贅沢に味わえると思う。バンドの演奏は奥行き方向の見通しがとても良く、懐の深さを実感させられる。ベースラインのグルーブは細部の彫りが深く、弦が力強く振るえるイメージが脳裏にありありと浮かんでくる。ウィンドチャイムのきらびやかな高域が美しく伸びながら透明な空気の中に散華していく。分解能の高い32bit DACの実力が存分に発揮されている。

 DSD再生は安藤裕子のアルバム「Acoustic Tempo Magic」から『早春物語』でチェックした。情報の密度が極めて濃厚。声の滑らかさと柔らかなタッチは「ATH-MSR7」「AK T5p」の両機で確かめることができた。ボーカルは抑揚の変化を立体的に再現。ここまでソースのディティールを引き出してしまうプレーヤーに今まで出会ったことがないと思う。声の立ち上がりが俊敏で、余韻も自然に漂う。ボーカリストに最も近い位置で歌を聴いているような、生々しくて甘美な時間を満喫した。

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