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インタビュー
» 2015年05月28日 18時27分 公開

朝の食卓においしい革命を起こす?――「BALMUDA The Toaster」のヒミツ滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(2/4 ページ)

[滝田勝紀,ITmedia]

 「トースターを作ろうと考えたのは、今からちょうど1年くらい前でした。たまたま社員全員でバーベキューをやろうと企画していて、ある平日に会社を休みにして、みんなで小金井公園に行きました。その日はとんでもない土砂降りで、本来はバーベキューなんてやれるような状況ではなかったのですが、せっかく皆で予定合わせたので、濡れないように木などに幌ターフを掛けたりして決行しました」(寺尾氏)。

 ちょうどその頃、トースターを開発していたため、社員が気を利かせてパンを持ってきていた。それをバーベキューの炭火で焼いて食べてみたところ、「これが驚くほど美味しかったんです」。

 しかし、後日社内で同じように炭火でパンを焼いてみても、その時の焼き上がりには到底及ぶものではなかった。首をかしげていると、社員の1人が「あの時、土砂降りでしたよね?」とつぶやいたことが大きなヒントになる。もちろん、バーベキューの時に湿度を計ったりはしていなかったが、「パンを美味しく焼くには水が必要なのか?」という漠然としたイメージが生まれたという。

 寺尾氏は、自身が足しげく通っている吉祥寺のベーカリー「ダンディゾン」のオーナーに連絡を取る。実はかつてオーナーから「バルミューダ製品のファンだ」という手紙をもらっていたからだ。「『ダンディゾン』は、“毎日食べるパンだからこそ、美味しくて、体にやさしい”というキャッチフレーズを掲げ、地元だけではなく、遠方からのお客さんも絶えない名店です。そのオーナーである引田さんの考えに共感し、ぜひ美味しく焼けるトースターを開発し、メーカーとしてのやり方で焼きたてパンの美味しさを世の中に広めたいとお伝えしたら、快諾していただきました」。

吉祥寺のベーカリー「ダンディゾン」のホームページ

 社員十数人で営業前の店舗に上がり込み、本当に焼きたてのパンを食べさせてもらうことになった。そして実際に作業の様子を見せてもらうために厨房に入った時、「そのオーブンが電気で動いていること、そしてスチームが使われていることが分かりました」。

 おそらくラック型のスチームオーブンが使われていたと思われるが、そこで水を使うことが美味しいパンの焼き上がりにつながるという考えに確信を得た寺尾氏。その後はトースターにどのように、どの程度の水を使えばいいのかを探るため、トライ&エラーを繰り返す。そうして完成したのが、同社の「スチームテクノロジー」だ。

 「スチームテクノロジー」では、パンを焼く前にトースター上部から水を入れる。付属のカップで5ccの水を入れると焼いている間に蒸気となり、薄い“水の膜”がパンの表面を覆った状態になるという。すると中の水分は逃げにくく、ふわっと仕上がり、表面はカリッと焼ける。

天板部の前方に注水口が設置されている

付属のカップも小さくてかわいい

最初はスチームが庫内に充満するため小窓が曇る

 もちろん、完成までの道のりは平坦ではなかった。「注水口の場所、スチームの出し方など、さまざまな方法を何十パターンも繰り返し試しました。注水口は扉側につけることも考えたのですが、基板があったりするので、万が一、水がかかってしまうと故障の原因にもなりかねません。また熱い部分に設けると作業時に火傷をしてしまう可能性もあるため、最終的に天井部のフロントに搭載しました。スチームを発生させるために、給水パイプに注がれた水をボイラーヒーターで温める方法を採用しています。これにより焼く前に、庫内にスチームを充満させると同時に、パンの周囲に“水分の膜”をはります」。

注水口から天井からサイド、下に向かって注水パイプが伸びている。下にボイラーヒーターが設置され、そこからスチームが発生する

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