当初は多めの水を使っていたが、なんとなく「少ない量の方がうまく焼けそうだ」と気づきはじめ、最終的にこのトースターサイズなら5ccという分量が、もっとも美味しくトーストを焼けるという結論にたどり着く。とはいえ、もちろん水を入れただけで、パンが美味しく焼けるというものではない。もう1つの重要なポイントは、ヒーターとその温度帯の制御だ。
「パンを焼くためには、60度、160度、220度という3つの温度帯の制御が重要だと考えました。パンの中のやわらかさと風味がよみがえるのが60度前後、表面がきつね色に色づき始めるのは160度前後、焦げ目が付き始めるのが220度前後です。この3つの温度帯を制御することで、どのようなパンでも最高の状態に焼き上げられます」。
とはいえ、この制御パターンというのが非常に緻密(ちみつ)で、ソフトウェアを作り上げることが開発過程でもっとも大変だったという。「この制御は通常のトースター用のマイコンでは対応できないため、詳しくは言えませんが、もう少し高い……ハイエンドのマイコンを搭載しています。それにより、庫内のパンの状態をセンサーを使って1秒ごとにチェックしながら、すべてがちょうどいい感じで焼けるように上下のヒーターの火力を調整することに成功しました」。
各ヒーターのオン/オフパターンは、パンの種類によって異なる。またヒーター供給元の仕様が微妙に変更されたりすれば、それだけで焼き上がりが変わってしまう。そのたびにプログラムを微妙に書き換えるといったことを繰り返したという。しかし、美味しく焼き上げるという点においては妥協せず、「しつこく開発し続けた」。
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