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伝統工芸と現代量産技術の合わせ技!――南部鉄器の羽釜はこうして作られる滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)

» 2015年08月14日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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工程06:鉄に残ったバリをグラインダーで削り取る

 切削加工を行うNC(数値制御)旋盤機械を使う前工程として、鋳物に残ったバリのような部分をグラインダーで削り取る。3.5合炊きのモデルの内釜は約1.1キログラムだが、この工程で削り取った時点ではまだ約5キログラムもの重さがある。

グラインダーに押し付け、バリを取る。大量の火花が飛び散るので工員はここでも顔にマスクを装着するなど完全防備

バリがきっちり取り去られた鋳物

工程07:鉄を規定の重量の羽釜の形状にまで切削する

 NC旋盤機械で鋳物を切削し、羽釜形状にする。成形時に用いた油を落とし、キレイにしてから計量する。規定重量の2%以下の精度が求められる。目視で巣が出ていないことを確認して工程が完了する。

「NC旋盤」という工作機械。釜を回転させながら刃物で削っていく。切削油を大量にかけながら切削することで、刃と釜のすべりをよくして精度を高める

最後に仕上がった内釜の原型の重さはチェック。ここで誤差が規定重量の2%以下であれば合格品となり、その後の塗装やコーティングなどの工程へと送られる

 水沢鋳工所の及川勝比古社長は、「ここまで精度を高めるのは一朝一夕ではできません。最初、この話をいただいて設計図などを見た時には、正直(生産を請け負うのは)厳しいのではないかとさえ思いました。ただ、これまでどこも実現したことがないものにチャレンジするのも、われわれの使命だと考え、やってみることにしました」と振り返る。しかし、製造を始めたばかりの4年前は歩留まり率が予想以上に悪く、「半分近くがロス」という厳しい状況だったという。

 このまま続けていては会社の経営にすら関わる状況だったが、現場の工員たちは根気よく生産するための技術を磨いていく。「象印マホービンの方々の情熱も手伝って、今では歩留まり率を非常に高い数値にまで引き上げることができました」(及川氏)。

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