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伝統工芸と現代量産技術の合わせ技!――南部鉄器の羽釜はこうして作られる滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2015年08月14日 06時00分 公開
[滝田勝紀ITmedia]

 前回、羽釜を採用した3社に考え方やアプローチを聞くことができた。今回は、象印マホービンの内釜「南部鉄器 極め羽釜」を生産する現場を見ることができたので、その工程を紹介したい。

象印マホービン「南部鉄器 極め羽釜」(NP-WU10)

 象印マホービンが内釜の生産を依頼したのは、岩手県は奥州市にある水沢鋳工所。水沢という街は、平安時代末期から1000年近く鋳物の街として栄えてきた場所であり、さらにこの水沢鋳工所は独自の機械加工技術もあわせ持つ。「鋳物作り+機械加工の両方に対応できる水沢鋳工所がなければ、この羽釜を作り上げることはできなかった」(象印マホービン)。

本当に南部鉄器で作られた羽釜

 伝統工芸品である南部鉄器をベースとしながらも、家電製品に求められる精度の高さや量産性を実現させなければならない。つまり、「南部鉄器 極め羽釜」は、南部鉄器の産地だからこそ生み出すことができたのだ。ここでは「南部鉄器 極め羽釜」がどのように手間暇かけて作られるかを順番にチェックしていこう。

工程01:砂などの材料を最適な分量に配合して鋳型を作る

 最初の工程は、砂に粘土鉱物やデンプン、黒鉛の粉末、水を加え、造型機で砂型を成型すること。水分が多いと溶湯(鋳鉄)を流し込んだときに水素ガスが発生して不良率が上がるため、水分量には繊細なコントロールが求められるという。

鋳型用の砂がベルトコンベアーで流れていく。炭素が含まれているため真っ黒

内釜の内側部分の型。こちらと外側部分を重ねるとともに、その間に方案から溶けた鉄を流し込む

工程02:電気炉で鉄を溶かし、煮えたぎるほどに加熱

 鉄の中に含まれる黒鉛を球状にして強度を増した「ダクタイル鋳鉄」(球状黒鉛鋳鉄)にするため、1500度以上の温度で鉄とマグネシウムの合金を混ぜる。球状化を測定器で確認し、軽石を混ぜて不純物を取り除く。

炉で溶かした鉄を運搬用の容器に流し込む。炉から出したときの温度は1500度ほど。火花が飛び散る危険な工程

マグネシウムの合金や軽石などを混ぜ、鉄のなかの不純物を取り除く

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