前回、羽釜を採用した3社に考え方やアプローチを聞くことができた。今回は、象印マホービンの内釜「南部鉄器 極め羽釜」を生産する現場を見ることができたので、その工程を紹介したい。
象印マホービンが内釜の生産を依頼したのは、岩手県は奥州市にある水沢鋳工所。水沢という街は、平安時代末期から1000年近く鋳物の街として栄えてきた場所であり、さらにこの水沢鋳工所は独自の機械加工技術もあわせ持つ。「鋳物作り+機械加工の両方に対応できる水沢鋳工所がなければ、この羽釜を作り上げることはできなかった」(象印マホービン)。
伝統工芸品である南部鉄器をベースとしながらも、家電製品に求められる精度の高さや量産性を実現させなければならない。つまり、「南部鉄器 極め羽釜」は、南部鉄器の産地だからこそ生み出すことができたのだ。ここでは「南部鉄器 極め羽釜」がどのように手間暇かけて作られるかを順番にチェックしていこう。
最初の工程は、砂に粘土鉱物やデンプン、黒鉛の粉末、水を加え、造型機で砂型を成型すること。水分が多いと溶湯(鋳鉄)を流し込んだときに水素ガスが発生して不良率が上がるため、水分量には繊細なコントロールが求められるという。
鉄の中に含まれる黒鉛を球状にして強度を増した「ダクタイル鋳鉄」(球状黒鉛鋳鉄)にするため、1500度以上の温度で鉄とマグネシウムの合金を混ぜる。球状化を測定器で確認し、軽石を混ぜて不純物を取り除く。
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