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日本でも視聴できる!――映画の街で見つけた最新4Kコンテンツの感動ポイント麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(5/5 ページ)

» 2015年08月27日 18時20分 公開
[天野透ITmedia]
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おまけ:モバイルH.265エンコーダー「Zao」

麻倉氏:最近見て感動したアイテムとして、ソリトンシステムズの「スマートテレキャスター Zao」を紹介したいと思います。AVCの次世代コーデックとして4K放送に使われたり、Ultra HD Blu-rayに採用されたりと、現在HEVC規格が注目を集めていますが、「スマートテレキャスター Zao」はH.265エンコーダーをモバイルサイズにしたものです。大きさとしては放送用カメラのバッテリー部分に入る、リュックサックに入るというくらいですね。

モバイルH.265エンコーダー「スマートテレキャスター Zao」。マシンパワーを要するH.265リアルタイムエンコードをモバイル環境で可能にする

 放送の世界が大きく変わってきており、ネットを通じた動画配信も盛んになりました。ですが屋外から生中継をしようとした場合はネットワーク容量が決まっているので、情報量を送ろうとすると圧縮をきつくかけないとならず、画質が犠牲になるという問題が現れてきています。

――大掛かりな中継ならば、大きな機材をあらかじめ準備することができますが、小規模なネット配信だとどうしても画質が犠牲になっている感じがします。最近ではUstreamやニコニコ生放送など(今のところUstreamはH.265未対応ですが)、個人が生放送を行える環境も整ってきている今、リアルタイム圧縮は非常に重要な課題ですね

麻倉氏:HEVC(H.265と同義)はAVC(MPEG-4 H.264)と同等の画質で2倍の圧縮率を誇る新世代のコーデックです。それを大掛かりなシステムではなく、バッテリー駆動のエンコーダーで、しかもソフトウェアではなくハードウェアエンコードするというのがこの製品のポイントです。リアルタイムにエンコーディングできるので、映像制作において非常にパワフルで、すでにさまざまな場面で使われています。

 1つはネット放送の中継における武器としてです。ソリトンシステムズが用意する専用回線が必要ですが、この回線はドコモなどが品質保証をしているので、途切れたり遅延したりしないハイクオリティーな映像配信が簡単にできます。

 また、リアルタイムで転送レートをフレキシブルに調整できる技術が開発されたことも大きい。従来は画質を犠牲にビットレートを下げて一定の伝送品質を確保するか、その逆を選択していたのが、このスマッシュなモノづくりで、回線の混雑度合いに煩わされる問題がたちどころに解決します。このおかげで、クオリティーを求めるのが難しかったネット放送やB2Bにおけるサービスが、簡便かつ高品質に提供できるようになるのです。

 このようなギアをポータブル化することで、単に既存のサービスがパワフルで高品位になるだけでなく、何か全く新しいサービスの登場が期待できます。そういう意味では、世界で初めてハードウェアでこれだけ小さなHEVCエンコーダーを作った意味があるのではないでしょうか。

カメラに取り付けた時の様子。生中継の強力なギアとなりそうだ

――手軽に持ち運べるサイズなら、生放送の可能性がうんと広がりますね。大きなイベントでは現地からのネット中継というのをよく行っていますが、「標準化団体のソフトウェアエンコーダーでは最大5日分のタイムラグが出る」といわれる猛烈な負荷を解決する一手になると良いです

麻倉氏:この製品は既に発売されていますが、民生品ではないのでなかなか表に出てきませんでした。ですがこういったアイテムは、やはりこれから急成長するであろうモバイル動画コミュニケーションの強力なギアになるのではないでしょうか。機材から回線までを含めたトータルソリューションです。業務用なので価格は50万円ですが、次世代の映像コミュニケーションツールとして普及してもらいたいですね。

――一般人がおいそれと手を出せる価格ではないですが、例えば「ニコニコ超会議」などで貸し出しを行ったりすると、とても面白いことになりそうです。民生品化も含めて、これからの動向に期待したいですね

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