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テレビ戦線、異常アリ――有機ELで起死回生を狙うパナソニック麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/5 ページ)

» 2015年09月28日 14時05分 公開
[天野透ITmedia]

テレビのトレンドは韓国メーカーが牽引

――今年のIFAに話を戻しましょう。麻倉さんは今回のベルリンをどう見ましたか?

麻倉氏:今年のIFAは「未来志向」「これからの展望」が豊かに語られたのではないかと思います。

 まずは花形ともいえるテレビの話からしましょう。ここ数年の「4K」や「曲面(カーブド)ディスプレイ」は、もうヨーロッパでは当たり前になった感じがありますね。アーリーアダプター層やマスコミにとっては既知の事実となっているので、ニュースバリューとしては低いです。ここでこれから新製品として提案するのは、実際にエンドユーザーと対峙するディーラーに対してのニュースですね。

――確かに、4Kや曲面といったものは、どこのブースに行ってもあって当然、もはや常識という感じでした

麻倉氏:日韓の大手メーカーのブースでも当たり前のように4Kやカーブが展示されていますが、以前と比べるとだんだん展示面積は小さくなっており、やはり目新しさはあまり無いです。

 これからを占う今年のトピックとしては、LGのOLED(有機EL)がトレンドセッターではないかと感じました。

――OLEDというと、今年の春にLGが日本市場への投入を発表して話題になりましたね。そういう意味ではこちらも「既知の事実」ですが、ここにはどんなニュースがあったのですか?

麻倉氏:日本企業が元気だった頃と違い、現在のテレビにおける世界市場はサムスンとLGがほぼ席巻しています。トレンドをつくるという視点でこの2社を比較すると、どちらも正面玄関にトピックアイテムが集中する傾向にあります。

 しかしサムスンは、昨年からメッセ南駅すぐの「CityCube」という非常に広い場所に変わったこともあって、正面だけの全力投球ではなく、色々なエリアに散らばっていました。

――日本人の感覚としては、幕張メッセの9、10ホールが丸々サムスンというところですかね。確かにあれほどの展示面積ともなると、1カ所にトレンドを固めてしまうとブースに濃淡ができてしまって問題です

麻倉氏:しかしラスベガスでは、正面玄関で全力投球のデモンストレーションがキチッとされています。曲面テレビや有機EL、4Kを提案した時も、玄関が全てそのアイテムで埋め尽くされていました。

 IFAでのこの役割はLGが担っています。元々シャープが陣取っていた、メッセ北駅から入る広い場所がLGブースになっています。今年は対面にソニーブースがくるということも相まって、入り口は77インチと65インチのOLEDで固められていました。一昨年まではここで3Dをやっていて、曲面が出るまではフラットで展示していましたね。LGはずっと3Dにこだわっていて、今年は他社で全く展示がない中でも比較的大きな3D展示がありました。

 今年大々的に玄関へ展示されたのはOLEDです。ここに集中的・象徴的に展示されるものが、ショーにおける業界のトレンドといえるでしょう。これからLGのOLED大作戦を開始するぞ、と。そこで非常にシンボリックなのが、宇宙の誕生ショーというデモ映像です。

――今年の映像は宇宙の映像の後にサバンナの夜景やシスティーナ礼拝堂などを次々と映して、最後に銀河がゴーンと出てきましたね

LGブースの玄関で展開されていたデモ映像の「最後に銀河がゴーンと出てきた」シーン。黒の沈みと白の伸びを両立させる、非常にOLEDらしい映像

麻倉氏:この映像にはOLEDの良さが集約されています。1つはコントラスト。黒が徹底的に沈み込んで、HDR的な白ピクセルの伸びも良いですが、これは正に宇宙の画そのものなんです。漆黒の闇に星が瞬くという映像は、液晶で良く見せるにはなかなか難しいです。

 それから速い動きに対しての応答速度です。星空をパンする映像で流星のごとく星がとんでいく、といった画素の動きもきっちり捉えています。さらにどこから見てもきちっとした映像が見られます。液晶シーンでLGはIPSもやっていますが、価格が安いVAでは、センターが良くても端はおかしな色になってしまいます。そういうことからすると、LGの玄関は「これからは液晶ではなくOLED」とを来場者へ訴えている訳です。

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