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猫がのったらどうなる? “目”を獲得した「ルンバ980」の気になるところ朗報(1/3 ページ)

» 2015年09月30日 03時21分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 米iRobot(アイロボット)が発表した新しいフラグシップモデル「ルンバ980」シリーズ。同社のコリン・アングルCEOが「最初のルンバ以来、最大の発表」という新世代のロボット掃除機は、上面に備えたカメラで家の中の地図を作りながらインテリジェントに行動する。では、実際の掃除はどう変わるのか。そして猫が上にのっても掃除が継続できるのか。気になる部分をチェックした。

「ルンバ980」をお披露目した米iRobotのコリン・アングルCEO

カメラを採用した理由とは?

 ルンバ980の最も大きな変化は、カメラを使用するvSLAM(visual Simultaneous Localization And Mapping)を採用したことだ。SLAMは、スタンフォード大学のロボット工学研究から生まれたオープンソースのマッピング技術で、Google無人カーの開発に利用されていることでも知られる。ロボット掃除機でもiRobotの競合にあたるネイト・ロボティクスやコーボルトなども採用しているが、どちらもカメラではなくレーザーレンジファインダーを使うタイプだ。

 iRobotも法人向けのテレビ会議用ロボット「Ava(エイバ) 500」でレーザーレンジファインダーとvSLAMを使っているが、ルンバ980では2つの理由で採用を見送ったという。1つはコスト。エイバは5万ドルもする法人向けのロボットであり、家庭向けのルンバで同様の精度を持つデバイスを採用することはできない。“枯れた技術”といえるカメラを使うことにより、「コストを100分の1レベルにまで抑えた」(コリン・アングルCEO)。

法人向けのテレビ会議ロボット「Ava 500」

「Ava 500」のマッピング

 もう1つはルンバのスタイルに対するこだわり。レーザーレンジファインダーは大型で高さが必要になるため、他社のロボット掃除機では本体上部に取り付けられている。しかしルンバの場合、“10センチ以下のベッドやソファーの下にも入り込む”という初代機から継承しているコンセプトを変更する気がなかった。カメラを採用し、本体に埋め込むような形で搭載することで、「ルンバ980」のボディーサイズは従来機とほぼ変わらない353(最大幅)×92(高さ)ミリに収まっている。

カメラの映像から特徴点を抽出するビジュアルローカリゼーションのイメージ。映像自体は残さない

 ルンバ980は、周囲を撮影した画像から家具の角などいくつもの“特徴点”を抽出し、オブジェクトの形や場所を記憶して地図を作る(=マッピング)。映像自体は残さないが、過去のデータと比較(=マッチング)して、例えば「天井の照明の座標が数秒間でこれくらい移動した」といった情報から自分の位置も推測できる。

 従来のルンバは車輪のエンコーダーで移動距離を検知していたが、車輪は空転することもあり、広い範囲を掃除すると誤差が蓄積して大きな差が出てしまう。それをいかに修正し、誤差を減らすかが重要な課題だったという。カメラを使用したvSLAMなら、どんなに部屋が広くても“特徴点がずれる”ことはありえない。さらにルンバ980は、パソコンの光学マウスのように光を使って方向や移動距離を計測できる「フロアトラッキングセンサー」を底部に搭載した。「2つの新しいセンサーで正確なマップを作り、賢い形で清掃のミッションをこなす」(米iRobotでロームロボット事業を統括するシニア・バイスプレジデントのクリスチャン・セルダ氏)。

フロアトラッキングセンサーを紹介するクリスチャン・セルダ氏

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