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4K/HDRに有機EL、そして「Playstation VR」――ソニーの戦略を幹部の発言から読み解くCES 2016(1/3 ページ)

» 2016年01月12日 06時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 CESの期間中、ソニーの平井一夫社長、並びにソニービジュアルプロダクツとソニービデオ&サウンドプロダクツの社長を兼務する高木一郎氏が日本人記者による合同インタビューに答え、これからのソニーの事業戦略に関する方向性を示した。そのディスカッションの中で、2016年にソニーが展開する国内向け商品戦略の重要なポイントが見えてきた。

ソニー代表執行役社長兼CEOの平井一夫氏
ソニーグループ役員(ホームエンタテインメント&サウンド事業及びコンスーマーAV販売プラットフォーム担当)、ソニービジュアルプロダクツ代表取締役社長、ソニービデオ&サウンドプロダクツ代表取締役社長の高木一郎氏

ハイエンド4K/HDRテレビ――先に価格の上限を設けるつもりはない

 ソニーが今年のCESでお披露目した展示の中で、おそらく最も多くの注目を集めたのはこれからの4K/HDRテレビ向け高画質化技術「Backlight Master Drive」だろう。その詳細については既に別記事でお伝えしているのでここで繰り返し述べることはしないが、気になるのはこの技術が商品としてソニーのどんなテレビに、いつごろ搭載されて商品になるのかかという点だ。これについて平井氏、高木氏ともに明確な答えを語ることはなかったものの、高木氏が「BMD」の搭載も含めた、大画面テレビのプレミアムモデルの価格設定に関する見解を述べている。

コンシューマーのテレビ向け4K/HDR高画質化技術として注目を浴びた「Backlight Master Drive」の展示

 「ソニーが初めて4Kの85V型ブラビアを出したときの価格は170万円だったので、200万円以上のクラスにも市場性あると言える。どれぐらいのバランスであれば、より多くのコンシューマーにテレビの付加価値を評価いただき、妥当な価格と受け止めてもらえるのかという点については、プレミアムブランドを自負するソニーとしてこれからも真摯に考えていきたい。先に上限を設けてしまうことなく、付加価値に見合う価格設定をしたい。でも一方で、より多くの方々に画質の良いテレビを楽しんでいただくこともソニーの使命なので、手頃な価格設定を目指すことも責務だ。ただ、儲からないようにする気は毛頭ない」(高木氏)

ソニーはなぜ「UHDプレミアム」ではない独自の「4K/HDR」ロゴを発表したのか

 CESの本開催直前に、UHDアライアンスが4K/HDR対応テレビのクオリティを示す新しい基準となる「UHDプレミアム」ロゴ規格を発表した。一方で、ソニーも同じUHDアライアンスに参加する取締役会社でありながら、今回のCESで独自の「4K/UHD」ロゴを作成、発表した。ソニーの狙いがどこにあるのか。平井氏、高木氏がそれぞれ本件についてコメントしている。

ソニー独自の4K/HDRロゴが発表された
パナソニックのプレスカンファレンスに登場した「UHDプレミアム」ロゴ

 「4K/HDRについては、ユーザーに迷いを与えないようクリアなメッセージを発信していくことが大事だ。そうでなければ混乱が起きかねない。ロゴに関してはソニーがリーダーシップをとるためにも、早めに提案を打ち出すことが大事と考えた。オーディオの“ハイレゾ”ロゴも当初はさまざまな会社が個別に作って運用していたものを、最終的にはソニーがつくった基準とロゴに統一されたことで、強いメッセージが打ち出せるようになった」(平井氏)

 「UHDプレミアムのロゴそのものは標準化団体の中で決まったことなのでリスペクトしているが、一方でソニーはユーザーに対してこれまでも“4K”の価値を『2ではなく4になるから、画質もアップする』というシンプルなメッセージで分かりやすくアピールをしてきた。言葉も『UHD』より『4K』をプッシュしている。その延長線上で、2Kから4K、SDRからHDRというステップアップを伝えることがより明快だという解釈だ。また、ソニーは4Kを表示デバイスであるテレビだけでなく、ビデオカメラや放送機器などにも広く展開している。グループでは4Kコンテンツの製作にも力を入れて取り組んできた。グループ全体の4K戦略の中でプロモーションしていくことに意味があると考える。その流れの中で『これからはHDR』というメッセージを分かりやすく伝えていく狙いをこめて新しいロゴを独自につくった」(高木氏)

 UHDアライアンスのロゴに含まれる「プレミアム」という言葉の選択についても、ソニーの商品戦略と相容れない部分があるという。高木氏はこう説明している。

 「ソニーでは1500ドル以上で、フレームレートが120Hz以上の4Kテレビ商品をプレミアムセグメントとして位置付けながらマーケティングしてきたので、これと異なるニュアンスでプレミアムという言葉を使うことに多少違和感がある。かたや、これまでプレミアムモデルとして販売してきたソニーの4Kテレビが、アライアンスの規格ではスペックが足りないがために、実はソニーのプレミアムモデルはこれしかない、という誤解にもつながりかねない。あるセグメントのスペックをクリアしなければプレミアムモデルではないという業界標準を設けることについては、違和感がある」(高木氏)

 なおソニーオリジナルのロゴを、今後他社も使えるようになるのかという問いに対しては「現在検討中」と高木氏は答えている。

 日本国内ではいくつかのテレビメーカーが苦境に立たされている中で、ソニーのテレビ事業に与える影響の見通しについて、高木氏は「まずはソニーのテレビ事業をどうするのかというシナリオを立てて、数を追わずにブランディング、高付加価値でブラビアを再構築したいと考えてここまで形を作ってのだから、いまは基本的に他社のブランド戦略については気にしていない」という構えを示し、あくまでソニーのポジショニングを明確にしていくことが先決という考えを述べた。そして「今後も“最も高画質なテレビはブラビア”という戦略について、手を緩めることなく推進していきたい」と話している。

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