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麻倉’s eyeで視る“ブルーレイのアカデミー賞”、第8回ブルーレイ大賞レビュー(後編)麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(6/7 ページ)

» 2016年04月04日 09時00分 公開
[天野透ITmedia]

審査員特別賞 「サウンド・オブ・ミュージック  製作50周年記念版 ブルーレイ・コレクターズBOX<5枚組>[5000セット完全数量限定]」

 「ドレミの歌」「エーデルワイス」「私のお気に入り」など、数々の名曲で世界的に人気が高い傑作ミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の50週年メモリアルパッケージ。舞台となったオーストリアのザルツブルクは、今なお世界中からファンが訪れ、ロケ地巡りのツアーバスが街中を走り回っている

麻倉氏:次は審査員特別賞について語らせてもらいましょう。受賞作は「山賊の娘ローニャ」と「サウンド・オブ・ミュージック」の50周年記念版コレクターズBOXですが、今回はサウンド・オブ・ミュージックをじっくりと語りたいと思います。

 前編の冒頭でも触れた通り、ブルーレイ大賞は作品賞ではなく、あくまでも“ブルーレイ大賞”です。それを基に考えると、なぜサウンド・オブ・ミュージックが特別賞に選ばれたかというと、実は「パッケージ大賞」という意味合いを持たせているわけです。配信がメインになってくるであろうこれからにおいて、パッケージを持つ意味を考えようというメッセージを本作の受賞に込めました。BPOの時にも触れましたが、パッケージが持つ情緒性や物語性、存在感、コレクション性など、そういった“モノの魅力”こそがパッケージを持つ意味ではないかと審査員は考えたわけです。

 ということは、一般的なBDの単なる青いチープなプラスチックケースのパッケージではなく、そこに“モノを持つ魅力”というか、映画を楽しむにあたってそれを助長させてくれるようなモノの意味合いというものを、パッケージはどれくらい持っているかという点が、大変重要ではないかという話になるわけですよ。

――だからこそ50周年記念のパッケージが受賞したことに意味があるわけですね。メモリアル版というのは作られる過程だけでもさまざまな物語が内包されますし、それを手にする人にもコンテンツにまつわるそれぞれの想いが豪華なパッケージへ託されます。

麻倉氏:審査員特別賞は一昨年くらいからこういった基準のもとで選定が始まりました。年間のBDパッケージの中で円盤に収録されたコンテンツが優れているというだけではなく、特にパッケージ性やコレクション性に優れたタイトルが選ばれています。所有する、棚に入れる、取り出す、再生するという、パッケージメディアが持つ独特な楽しみを引き出す要素がどれだけ詰まっているかという点が、今回の重用な受賞理由です。

 今回は50週年記念の特別版ということで、日本語吹き替えがとても豪華なのも大きな特長ですね。マリア先生に平原綾香を、トラップ大佐はミュージカルスターの石丸幹二という布陣です。

――誰でも知っている「ドレミの歌」を平原綾香さんが朗々と歌い上げており、そういった名曲の新録を楽しむという方法もありますね。長女リーズルを人気声優の日笠陽子さんが演じていて、「もうすぐ17才」「エーデルワイス」などで落ち着いたデュエットを聴かせてくれるというのも、個人的にはポイントです

麻倉氏:ブックレットや楽譜といった特典も豪華で、当然ここも大きな評価されました。サウンド・オブ・ミュージックのコレクター版というのはレーザーディスク時代から何度も出ており、ある時はオルゴール、またある時は写真集と、その度に非常に凝った特典が付いてきました。私はザルツブルクでロケ地巡りをするほどサウンド・オブ・ミュージックが大好きで、今までのコレクター版は全て持っているのですが、楽譜という特典は今までにないですね。これまでを考えると決して大げさなパッケージではないですが、新録の吹き替えに加えて作品を楽しむ数々の小物が入っています。50週年を祝うアイテムとして、コレクション性とパッケージ性を上手く両立させた作品という点が大いに評価されました。

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