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ソニーが“照明”を作る理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(1/3 ページ)

» 2016年05月16日 19時47分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 ソニーといえば、オーディオ・ビジュアル製品が中心の“クロモノ家電メーカー”だが、最近はシロモノ家電的にも注目したい動きを見せている。それが「マルチファンクションライト」であり、「Life Space UX」の「LED電球スピーカー」や「グラスサウンドスピーカー」だ。いずれもLED照明という形をとりながら、単なる照明器具の枠を超えた付加価値を提供しようとしている。今回は、Life Space UXの開発に携わるTS事業準備室の戸村朝子氏、そしてマルチファンクションライトの開発責任者であるL-Gadget事業室、横沢信幸氏の話を元に、ソニーがLED照明を相次いで発売した理由に迫った。

「マルチファンクションライト」
「グラスサウンドスピーカー」

“less is more”――余計なものはないほうがいい

 「Life Space UX」は、ソニーの平井一夫社長直轄の製品開発プロジェクトで、その商品企画は戸村氏が所属するTS事業準備室が一手に担っている。

 Life Space UXのコンセプトは、「居住空間をより快適にするため、空間を最大限に生かしつつ新たな体験を生み出す製品の開発」というが、注目は「さまざまな主張を持つ商品を空間に足すのではなく」「今ある空間をそのままに」といった言葉が添えられていることだ。

ソニー、TS事業準備室の戸村朝子氏

 「これまでのスピーカーやテレビといった製品はデザイン的な主張が強く、それを中心に周囲の空間を作らなければならないものがほとんどでした。LifeSpace UXでは、このような“製品中心”の発想を180度転換し、今ある空間はそのままに、その空間で“人々が体験したいこと”に焦点をあてて新たな製品を開発しています」(戸村氏)

 リビングや寝室といった居住空間は、人々が最高にリラックスできる場所で、そこにはお気に入りのソファーやテーブル、ベッドといったインテリアがある。オーディオビジュアル製品の中にもデザイン性の高いものは存在するが、どうしても色やデザインテイストは異なり、室内で“異質なもの”になりがちだ。そんな状況に疑問を投げかけたのがLife Space UXだった。

2015年1月に発売した「超短焦点4Kプロジェクター」。価格は、左右のスピーカーやキャビネット2個がセットで500万円(税別)
ポータブル超短焦点プロジェクター

 「従来のオーディオビジュアル製品との一番の違いは、製品の色や形だと思います。超短焦点4Kプロジェクターはサイズは大きいものの白い家具のような筐体(きょうたい)で、壁の色に自然と馴染みます。小型のポータブル超短焦点プロジェクターは白い箱形で、楽しむための場所を選びません。LED電球スピーカーはそれ自体が電球の形なので、デスクスタンドなどに装着すれば空間にモノが加わりません。グラスサウンドスピーカーも同様に、それ自体は柔らかな光をまとったLED照明にしか見えません」(戸村氏)

「サウンティーナ」(2008年発売)。サイズが325(幅)×1845(高さ)×325(奥行き)mmと大きく、価格も105万円と高価だった

 デザインのこだわりは細部に及ぶ。例えばグラスサウンドスピーカーは、有機ガラスを加振器で振るわせて音を出すという「サウンティーナ」(2008年発売)の技術を家庭向けにダウンサイジングしたものだが、バッテリーを内蔵して電源コードを不要にしたり、中にフィラメント型のLED照明を組み込んでキャンドルのような光り方にするなど、インテリアに溶け込む姿を目指した。「音量調節などの操作ボタンは底面に配置して、スピーカーであることを感じさせません。いかにも“スピーカーである”という主張を抑え、まるで照明と音が自然に存在する感覚で音楽を楽しめます」(戸村氏)

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