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ソニーが“照明”を作る理由滝田勝紀の「白物家電、スゴイ技術」(3/3 ページ)

» 2016年05月16日 19時47分 公開
[滝田勝紀ITmedia]
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 デザインは、ごくスタンダードなLEDシーリングライトだ。「例えばUFOみたいな近未来的なユニークな形であった場合、照明としてどうでしょうか? 男性の支持は得られる可能性もあるかもしれませんが、おそらく女性の支持は得られません。家の中心にあるものですから、家族全員に受け入れられるものにしなければならない。今回の製品は(オーディオのような)嗜好品ではなく、家の中に自然にフィットする――つまり、アンナチュラルであってはいけないということで、デザインも“ソニーっぽくない”ものにしました」

 一度は製品企画を白紙に戻したが、シーリングライトにスピーカーを加えるという基本的な構造は残った。しかし、その目的は当初と少し異なる。「ユーザーの声を聞くと、もう部屋にモノを増やしたくないとか、置く場所が問題だという意見も多い。ダイニングに置こうとすれば、一番使いやすいのはダイニングテーブルの中央ですが、やはりじゃまになるかもしれません。電源だってわざわざ引かないと使えないのは不便です。実はゼロリセットした際、われわれはあらためて照明器具を作るというより、この天井という“場所”を利用することの方が重要だったのです」

専用アプリで「伝言」や「みまもり」(いるふり防犯)など多彩な機能が利用できる

 結果的に、天井の照明を使うことで、スマホにより家の中にある家電を制御するマルチファンクションユニットを生み出したソニー。その機能は人感センサーを活用した家電の制御、家族とのコミュニケーションに役立つ「伝言機能」など多岐にわたる。ソニーは自らシロモノ家電を作ることが目的ではなく、家全体を制御するものを作りたかったのだ。

人感センサーが子供の入室を検知すると、お母さんの「伝言」が天井から聞こえてくる

 「家は外側から作るか、内側から作るかでアプローチが違います。例えば住宅メーカーなどは外から作る側、われわれは家を内側から作る側です。これはあくまでも個人的な意見ですが、今後は“家”を作りたいと考えています。建物という意味の“家”ではなく、家族がゆっくり快適に過ごせる家をソニーの技術によって実現する。マルチファンクションユニットはその基礎になるはずです。ソフトウェアをアップデートしたり、センサーなどを追加することで、その利便性は無限に広がります。将来的にどの家でもマルチファンクションユニットがハブとなり、家自体が住む人にとってもっと快適な環境になればと考えています」(同氏)


 部屋に「余計なものを置かない」ために照明器具の形を採用したLife Space UX、家の新しいインフラを作るために「天井というスペース」を活用したマルチファンクションライト。LED照明というスタイルは共通でも、その先にある目的は大きく異なっていた。

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