あるときはピコプロジェクター、またあるときはLEDライト、しかしてその実態はAndroidデバイス!? 5月中旬に開催された「Japan IT Week」で注目を集めた「Beam」(ビーム)は、一口で説明することが難しい多機能デバイスだ。しかも、ユーザーの設定した“トリガー”によってさまざまな機能を呼び出せる便利なアイテムでもあった。開発元であるオランダBeam Labs.のCEO、Don Molenaar氏に詳しい話を聞いた。
Beam Labs.は、2014年に設立されたスタートアップ企業だ。Molenaar氏によると、デザイナー、エンジニア、そしてセールス担当という、3人がそれぞれの特技を生かしつつ、アイデアから製造までをまかなう小さなメーカーだという。「最初はテーブルプロジェクターのようなものを作ったのですが、『それなら照明にしたら面白い』と言われてBeamの原型ができました」(Molenaar氏)。このアイデアを2015年の冬にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」に掲載したところ、初日だけで約20万ドルの支援を獲得。さらに「2日目で40万ドル、最終的には80万ドルくらい集まりました。その資金を元手に製造を始め、昨年12月にはサポーターに向けて製品を発送しました」
現在はオランダ、ドイツ、イギリス、フランス、ベルギー、アメリカ、オーストラリアに販路を広げ、今年の3月と4月には相次いで欧州のデザイン賞(Red Dot Design AwardとiF Design Award)を獲得。そして日本でも販売を開始するため「+Style」で支援者を募集し、先日見事に目標金額をクリアしている。同氏によると、集めた資金でローカライズの作業を行うという。
Beamの外観は、黒いシェードが付いたLED照明のようだ。実際、正面から見ると24個のLEDモジュールがリング状に並べられており、ライトとして利用できることが分かる。Molenaar氏によると、明るさ(全光束)は40W電球相当で、色温度は2700K(ケルビン)のほぼ電球色。1つで部屋中を明るくすることは難しいが、手元を明るくするには十分な明るさになっている。しかも調光に対応した。
LEDモジュールの中に見える穴はピコプロジェクターのレンズ。こちらもLEDを光源としており、明るさは約100ルーメン、解像度は854×480ピクセルというスペックだ。「最大3メートルの投影距離で120インチ程度まで画面を投影することができます」(Molenaar氏)。LED光源の寿命は2万3000時間で、1日10時間使用しても6年間は使えるという。
背面には見慣れた電球の口金。もっとも一般的なE26と呼ばれる口金に対応しており、すべての電源はここから供給される。つまり、サイズさえ合えば室内にある照明器具に取り付け、プロジェクターの映像を楽しめるというわけだ。「天井でNetflixを見たり、Youtubeにある料理のレシピをキッチンで映したり、さまざまな使い方ができますよ」(Molenaar氏)
映像ソースは多彩だが、HDMI入力が付いているわけではない。Beamは1.3GHzのデュアルコアプロセッサと8GBのストレージを搭載したAndroid 4.2デバイスでもあり、そのGUI(グラフィカルユーザーインタフェース)をプロジェクターで映し出せる。「Play Store」にも対応しているため、ゲームをはじめ、「Play Store」からアプリをダウンロードすればYouTubeやNetflixなどの動画も楽しめる。いわば、アプリの数だけ映像ソースがあることになる。同氏によると、基本的にBeamにインストールするAndroidアプリに制約はないという。
通信機能はBluetooth 4.0とWi-FI(IEEE 802.11b/g/n)。MiracastやAirPlayにも対応しているので、スマートフォンに保存しているコンテンツやアプリの画面を表示することもできる。そしてBeamは、2W+2Wのステレオスピーカーも内蔵しているため、オーディオシステムとつなぐ必要もない。1台で簡潔できるエンターテインメントマシンに仕上がっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR