ITmedia NEWS >

「Amazonでは買えないようなものを」神楽坂“ねこの郵便局”で切手を貼ってきたなぜ郵便局?(2/2 ページ)

» 2016年06月26日 06時00分 公開
[鈴木美雪ITmedia]
前のページへ 1|2       
神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat

お店に置く商品は「背景」まで考える

―― お店にカメラが飾ってあるのは、なぜですか?

福本さん 値段がついているものは、売り物ですよ。絵はがきはイラストだけじゃなくて、写真になっているものも多いんです。絵はがきを作るための写真を撮るってことはカメラも必須アイテムなので。背景をたどるとカメラなんですよ。基本的には、常に880円(税込)で1個、中古のカメラをお店に置いて売っています。売れたらまた新しい中古のカメラを仕入れて、同じ値段で飾っていますね。

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 店内にはところどころ絵はがきが。
神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 1枚216円の絵はがき

―― 880円はこだわりがあって?

福本さん まぁ「それぐらいかなあ」って。それで儲けたいわけじゃないからねえ。でも、たまに売れるんですよ。切手が70円なのも、儲けたいというよりはお客さんのことを考えていますね。エアメール代で世界中に出せる値段が、70円。外国人のお客さんも多いので、絵葉書買って貼ってうちのポストに出していく観光客の方もいますよ。

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 左側、店内にもポストがある

―― えっ、これは郵便局の人が取りに来るんですか?

福本さん いやいや、このポストに出してくれたお客さんの郵便物は、ねこの郵便局の「肉球スタンプ」を切手以外のところに押して、私が通常のポストに入れます。切手が好きなお客さんの中にもパターンがあって、ただかわいい切手が見たいって人と、切手を使って誰かに送りたかったり、お店のポストに投函したいっていう人もいたりするから、ちゃんと郵便物に使える切手も用意しています。

Amazonでは買えないようなものを

―― 切手の他にも招き猫や眠り猫などがたくさん置いてありますが、お店のシンボルか何かですか?

福本さん ビンテージの招き猫は絶対置きたいと思っています。このお店のお客さんって7〜8割が女性なんです。男性は女性にくっついて入ってくる人か骨董品が好きな人。あと奥さんに伝えたいから写真だけ撮って行って、2回目に奥さんと一緒に来るお客さんもいますね。

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat お店で最も高価な招き猫。8万6400円(税込)だそうです

 福本さんによると、立地的に赤城神社が近いことから「お参りの前後に縁起物として招き猫グッズを買っていく人も多い」という。

福本さん ビンテージの招き猫だったり、中古のカメラだったり、お店に置く商品の基準は「Amazonで買えない」「普通に買い物しているだけじゃ出会えないようなもの」ですね。招き猫もいろいろあって。今は「この色の招き猫がいい」って思ったら、何でも検索で手に入る時代じゃないですか。そうじゃなくて、この店だから出会えたってお客さんが思ってくれる商品を置くようにしています。

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat ハワイで福本さんが入手した眠り猫。日本の物が海外に輸出され、それを観光のときに逆輸入して仕入れたもの

 (※グッズの詳細は後日、別記事で紹介する予定です)

オーナー福本さんのこだわり

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 取材当日は雨模様でしたが、晴れているとお店はこんな感じ

 入り口にあるバス停について聞いたところ、あれは手作りだという。

 「うちのお店は不定休なので、催事が忙しいと閉まっていることも多いんですよ。お店のWebサイトを見てくれたお客さんは、電話して営業時間を確認してくれることも多いんですが、ふらっと来るお客さんだと閉まっている日にきちゃって『お店の場所がよく分からなかった』という人もいて。そういうとき、バス停があれば『ああ、ここがねこの郵便局なのね』って分かるなって思ったんです」(福本さん)

 筆者がInstagramで確認したところ、ねこの郵便局のバス停を写真で撮って掲載しているユーザーもいた。福本さん自身も大の猫好きだそうで、2匹の猫を自宅で飼っている。

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 福本さんの飼い猫さん。名前は、ひよちゃん
神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 福本さんの飼い猫さん。名前は、おかゆちゃん
神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 日が暮れると、昼とは違って幻想的な明かりが楽しめる(冬場の夕方以降の時間が一番きれいらしい)

どこか不思議なのに居心地がいい場所

神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat しっぽ付きのイスは自由に座ることができる(売り物のしっぽ付きイスは売れてしまったそうで、写真のイスは非売品とのこと)
神楽坂 ねこの郵便局 猫 cat 実際に座ってみたニャ

 最後に「あとこの店には何枚の切手が貼れますか」と福本さんに聞いてみると「あと1万枚くらいは貼れると思いますよ。柱はうちで用意したものなので、天井の近くにある柱も貼れる。ローラーの用意が必要かな」と笑ってくれた。

 海外のお客さんの中には、絵はがきを自分宛てに出す人もいるようだ。日本で絵はがきを出してから帰国すると、国境を越えたねこの郵便局の絵はがきが肉球スタンプ入りで届いているという。赤城神社も近く、招き猫もあることからパワースポットの一種として来る人も多い。夏目漱石の住居や猫スポットを巡ってきてからこのお店に来るとより深く楽しめそうだ。運がいいと、お店の近くで野良猫にも会えるらしい。

 どこか不思議なのに居心地がいい「ねこの郵便局というなまえのお店」は、人の記憶と思い出に残る“都会のオアシス”だった。

 ※編集部注:「ねこの郵便局というなまえのお店」は不定休なので、行くときはWebサイトを確認してから行くことをおすすめします。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.